復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月28日「値上げの真犯人は日本政府だ」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年5月28日の琉球新報1面は、「めだつ県産品の値上げ/77品目、361円以上で換算/近く適正価格公表/県企画部調査、通貨差損が要因に」との見出しで、沖縄県企画部が復帰後の通貨切り替え後の那覇市での小売物価調査の結果をリスト表とともに紹介している。調査は表示可能な227品目で実施し、1ドル=305円を下限、1ドル=360円を上限として、復帰前と復帰後を比較している。305円基準でみると約90%が値上がり、360円でみても38%が値上がりしたという。値下がりも10%程度あった。復帰後にドル換算でレートの360円以上になったもので、最も大きかったのはキャベツ(960円)や白菜(760円)、からしな(673円)、リンゴ(527円)、はり薬(556円)、殺虫剤(513円)、ドロップス、ソーダ、郵便料・はがき(500円)などとなっている。

 物価高騰を巡っては、沖縄婦人団体連絡協議会(沖婦連)が「物価値上げに抗議する消費者大会」を那覇市で開いたことを伝える記事で「高物価追放しよう/〝値上げの真犯人は日本政府だ〟/不買運動も辞さぬ」との見出しで県民の動きも掲載している。記事中で「激しい物価上昇にウーマン・パワーが爆発した。大会では『復帰のどさくさまぎれで起きた物価高騰で生活は火の車になった』『生活を苦しめている異常な物価値上がりの張本人は1ドル=305円交換を決定した日本政府だ』―と激しく政府を追及。大会宣言でも『値上がりの〝元凶〟はすべて日本政府だ』―と決めつけ、政府の責任が浮き彫りにされた」と指摘している。「どうしてくれるこの混乱」などのプラカードを掲げて大会に参加する市民らの姿を大きく写し込んだ写真も掲載している。

 このほか、米ソ首脳会談での戦略兵器制限交渉(SALT)の行方を巡って「SALT協定で新時代へ/ニクソン外交の足場固まる」との見出しの記事のほか、「出入国など対決法案流産/政権末期、低い〝打率〟」の記事や、「輪島、初有償決まる/大相撲夏場所」といった記事も掲載している。

 

 

 

 

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。