公正演出も「出来レース」感、自民の知事選佐喜真氏擁立 県政与党「意外性ない」


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知事選候補者として擁立が決まり、決意表明する佐喜真淳氏(中央)=28日午前、那覇市の沖縄ハーバービューホテル(又吉康秀撮影)

 自民党県連や経済団体などでつくる知事選候補者選考委員会は、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(57)を9月11日投開票の県知事選に擁立することを決めた。初めて公開演説会を取り入れるなど「開かれた選考」を演出し、世論の盛り上げも狙った。ただ、前回知事選にも出馬した佐喜真氏が下馬評通りに選出されたことで、県政奪還に向けた本格的なスタートとしてはインパクトを欠いた。現職の玉城デニー知事(62)も近く出馬を表明する予定で、前回知事選と同様の対決構図となる。新型コロナウイルスの流行など取り巻く環境は4年前と大きく変化している。

 「開かれた選考」

 今月1日の選考委の発足にあたり、県連は「開かれた選考」をテーマに据えた。県連関係者によると、前回知事選の選考で「密室」批判を受け、保守系候補の分裂危機を告示の直前まで引きずったことが背景にあったという。そこで、世論喚起も同時に狙える「公開演説会」というアイデアが浮上した。「収拾が付かなくなる」との内部の声を押し切り、自薦も含めて選考対象者を募った。

 だが、21日に選考委は最終選考の対象者として7氏を公表したものの、佐喜真氏の対抗馬として有力視された2氏が辞退。公開演説会に臨んだ5氏のうち、擁立論が形成されていたのは佐喜真氏だけ。ある選考対象者が「(佐喜真氏擁立の)『アリバイづくり』にならないか」と漏らすほど、「出来レース」の印象は強まっていた。

 決定後、自民県連の中川京貴会長は「知事にふさわしい人物をおのおの肌で感じたと思う」と演説会の手応えを語った。一方で、ある県連関係者は「取り組み自体は成功だろうが、結果しては佐喜真氏ありきの『出来レース』の形になってしまった」と声を落とす。

 「勝ち目十分」

 佐喜真氏の選出に、政府関係者は「落ち着く所に落ち着いた」との見方を示す。知名度のある玉城氏相手に苦戦が予想されるが、「経済が好調だった4年前とは状況が違う。コロナ禍で打撃を受けている県経済の回復を訴えれば勝ち目は十分にある」(同関係者)と自信をのぞかせる。

 これに対し玉城県政与党は、対抗馬が固まったことにも「佐喜真氏は本命視されていた。意外性はない」との受け止めが大半だ。4年前に大差を付けただけに「くみしやすい」との声もある。一方で、オール沖縄幹部は「対峙(たいじ)するのは総力戦で臨んでくる政府だ。県民目線で政策を進める知事か、国の言う通りにする知事かを選ぶ闘いだ」と気を引き締めた。
 (大嶺雅俊、安里洋輔、梅田正覚)