復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月31 日「知事選きょうスタート」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年5月31日の琉球新報1面は、「知事選きょうスタート/返還のあり方問う/保守と革新が総対決」との見出しで、初の沖縄県知事選が31日に告示されることを伝えている。初の知事選には、革新陣営から屋良朝苗知事が、保守陣営から自民党の大田政作県連会長が立候補を表明している。

 記事では「こんどの選挙は沖縄の祖国復帰が実現して初めて行われるだけに革新共闘、自民党の両陣営は沖縄県政の基本方向を決めるばかりでなく、県民世論を二分している返還のあり方についての県民審判の意味を持つものだとして①沖縄県政のあり方②基地、自衛隊の配備③物価④沖縄の経済開発のあり方―など広範な政作をかかげ、対決をいどんでいる」と知事選の位置づけを分析している。

 さらに革新共闘会議と自民党の知事選に向けた声明も紹介している。革新共闘会議の声明では「県民自治を守り抜く」の見出しで「まず佐藤自民党政府が一方的に進めてきた『復帰』が県民の生活不安と基地不安をもたらしたことを問わなければならない」と政府への怒りとその責任を追及するトーンを高めている。一方の自民党声明は「物価安定対策進める」の見出しで「沖縄返還は民族的大事業で新しい沖縄県の発展を期さなければならないが、この県づくりは革新ではなし得ない」と経済振興を前面に対決姿勢を強めている。

 知事選に関連して、この日の1面では「選挙違反きびしく追及/明正で沖縄県づくりを」との見出しの社告を掲載している。その中で「県知事選は(中略)激しい選挙戦が予想されています。そのため悪質な選挙運動による違反行為がなされるおそれもあります。〝あすの沖縄〟に重大なかかわりを持つ選挙だけに、全県民一人びとりが、よごれた選挙、不まじめな選挙を絶対に許してはならないと思います。本社は、明正選挙を達成するため、不偏不党、厳正中立の立場で報道にあたり、(中略)特に選挙違反は法の許す範囲できびしく追及します。政界の浄化を目ざし、選挙法違反行為は世論の徹底的な批判を受けるべきであると思うからです」と記し、候補者や運動員が任意で取り調べされたり、逮捕されたりした場合に選挙運動中でも政党名、候補者名を報道すると宣言している。

 物価高騰問題では対策などを求めて意見書を全会一致で採択した沖縄県会の超党派の代表団が上京して要請する様子を伝える記事では「物価・通貨、個人を対象に補償/山中総務長官、具体的方針示さず」との見出しで、応対した山中貞則総務長官の発言を紹介している。具体的には「昨年10月8日の通貨確認以降の経済成長に見合う補償は、個々の個人を対象に責任を持って補償するようにしたい」と述べたという。沖縄県会の代表団らの要請については「意見書にそって①昨年10月8日の通貨確認措置もれの補償②昨年10月8日以降の経済成長に見合う分の追加補償③本土旅行者の旅費、学生への送金の補償④物価高騰の抑制策の早急な確立⑤中小企業、農林漁業に対する長期低利の融資の拡大強化―の5点について善処を要請した」とある。

 異常な物価高騰に対する政府の対策については「〝物統令〟を発動準備/きょう事務レベル会議」との見出しで掲載している。記事では「31日の会議には課長クラスが集まるが〝暴利〟の判定の仕方が論議の中心になるとみられる。従業員賃金の360円換算問題もある。特恵措置の内容の違いもあって『全商品に同一の基準を当てはめることは困難だ』といわれている」と記している。 

 

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。