復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉6月1 日「大田氏と屋良氏、激しい言論戦へ」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年6月1日の琉球新報1面は、「大田氏、屋良氏、激しい言論戦へ/県知事選/〝豊かな県づくりを〟/本土から早くも支援に」との見出しで、31日告示の初の沖縄県知事選挙がスタートし、舌戦が始まったことを伝えている。記事では「こんどの選挙は沖縄の選挙史上最高の58万4532人の有権者を数え、27年におよぶ米統治から脱却し、5月15日の復帰を経て初めて行われるものだけに、両陣営の意気込みは告示当日から高まった。まず自民党の大田候補は『革新側には行政責任が欠如し、他に責任を転嫁している。行政責任の確立こそ急務』と強調、屋良候補(革新共闘)は『県民が米国統治のなかで、きたえぬかれた魂を生かすことが沖縄県建設の第一歩だ』とたがいに県政担当へ強い意欲をみせた」と記している。

 復帰後の異常物価高騰を巡って「四組合が独禁法に違反/クリーニング・豚肉・パン・プロパン/公取委、協定破棄求める」との見出しで、業者組合の価格協定による不当値上げを取り締まる公正取引委員会沖縄分室による行政指導の内容を明らかにしている。記事では「このほか『理容』『美容』『飲食店』『豆腐』の業者についても価格協定の事実をほぼ固めている」と、不当値上げが広範囲に及ぶ実態を伝えている。

 関連の記事として、物価高騰に対応するための政府と県、市町村からなる「物価対策連絡協議会」の対策も紹介している。記事では「物価監視体制強める/対策協、専従係官も配置」との見出しで、物価安定策を紹介している。さらに政府の対策として「物統令、引き続き検討/担当係官会議/管理物資は問題ない」と、物価統制令の発動の有無などについて見通しを披露している。

 さらに復帰後の沖縄物価対策を問う参院沖縄問題特別委員会の記事では「30億円を追加支出/確認後の通貨差損/補てん策を検討中/山中長官」との見出しで、山中貞則沖縄開発庁長官の答弁を紹介している。

 このほか、テルアビブ国際空港で起きた日本人過激派ゲリラグループによる銃乱射事件を共同電で大きく扱っている。

 

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。