【深掘り】燃料タンク投棄、米軍からの連絡は2日遅れ…通報態勢また機能せず


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タンク落下機と同系統とみられるFA18戦闘攻撃機=1日午後0時19分、嘉手納基地(又吉康秀撮影)

 米海軍のFA18E戦闘攻撃機が投棄した燃料タンクが東村の海岸に漂着した問題について、国や県が米軍から情報提供を受けたのは5月31日だった。実際にタンクが投棄されたのは2日前の5月29日。日米合意の事件・事故の通報手続きでは正確で迅速な情報提供の重要性をうたう。米側から日本側への通知が遅れる事例は繰り返されており「タンクが見つからなければ公表しなかったのでは」(県関係者)との疑念も渦巻く。県や村は関係機関に抗議などをする方向で調整を進める。

 ■合意の抜け穴

 米軍関係の事件・事故について日米合同委員会が1997年に定めた通報手続きでは対象に「投棄」も含む。通報基準には(1)日本国内で発生(2)日本国民らの身体や財産に損害・傷害を与えるか、その可能性があること(3)公共の安全や地域社会の物理的な環境に影響を及ぼす―なども定める。

 在日米海軍の説明によると、FA18Eがタンクを投棄したのは沖縄沖約27キロ(15カイリ)の公海上。領海(12カイリ)の外だが、接続水域(24カイリ)内とみられる。米軍が公海上空で投棄したため、通報対象ではないと判断した可能性がある。

 防衛省関係者は実際に通報対象に当てはまるかどうかは「米軍の判断だ」と語る。本紙は米海軍に通報しなかった理由を質問したが、明言は避けた。通報に関する合意はあるものの、実態は抜け穴がある状態だ。

 ■注意喚起できず

 FA18Eはエンジントラブルの発生を受け、5月29日に嘉手納基地にダイバート(目的地変更)する前にタンクを投棄した。トラブル時の着陸で、機体を軽くすることが目的とみられる。

 県外でも米軍三沢基地(青森県)所属のF16戦闘機が昨年11月、青森空港に緊急着陸した際、燃料タンクを投棄した。米軍は当初、投棄場所を「非居住地域」としていたが、実際にタンクが見つかったのは同県深浦町の住宅地から20~30メートルの場所だった。

 県関係者は「危険を承知で(タンクを)落とさないで飛行を続けるべき、とはいわない」としつつも「仮に訓練空域・水域内で落としたとしても、大きな物体が海を漂うことになる。通報がなければ、沿岸地域への注意喚起もできない」と指摘した。
 (明真南斗、塚崎昇平)