復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉6月7日「県知事選の争点、『自主県政』と『自治』」―琉球新報アーカイブから―


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 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年6月7日の琉球新報1面は、「県知事選の争点明確に/『自主県政』と『自治』/両派、浸透作戦に重点」との見出しで、立会演説会で盛り上がりをみせる沖縄県知事選の政策論争について紹介している。記事によると「中央と協議しながらの自主県政か自治の確立か」「新全総とタイアップして沖縄開発の是非」「物価問題」と3点の論点に絞られてきたと伝えている。「政策論争では、まず大田陣営が県政の基本姿勢として『一刻な実のイデオロギー闘争に根ざす政治論議を廃し、政府と一体となった自主県政を築く』と主張しているのに対し、屋良陣営は『中央直系を廃し、県民自治を基調とした沖縄県を確立する』と強調している」と大田政作候補と屋良朝苗候補の主張の違いを紹介している。

 加えて「自衛隊配備問題については、自民党が突っ込んで取り上げないため、論争はかみ合わないが、革新は『自衛隊、基地問題を取り上げないのは県民をだますものだ』として積極的に追及する方針だけに革新のけしかけに対し自民党がどのような出方をするか注目される」と言及している。

 選挙のこぼればなしを紹介する「選挙レーダー」では「『主張』から『中傷』にエスカレート」との見出しで、選挙戦で飛び交うパンフレットやビラの内容に触れている。「パンフ、ビラの内容も『主張』からしだいに『攻撃』『中傷』へとエスカレート。ついに告訴合戦を招き早くも泥沼化の様相だ」と紹介している。その様子は「選挙時に文書によるPR合戦はつきものだが、こんどはとくにモウレツ。なにしろ県制移行の5月15日以前まで、取り締まる法もなく、知事、県議選ともしたい放題。この無法状態を〝乱用〟しての大っぴらな事前運動で、かつてない〝パンフの洪水〟が出現。復帰前に加速度を増したこの文書合戦は、選挙戦突入後、いよいよピークに達した感」と表現している。

 復帰前から形骸化が問題になっていた、米軍装備の重要変更や戦闘作戦行動に燗する事前協議制について「事前協議制話し合う/首相、キ補佐官と台湾も」との見出しで、佐藤栄作首相が来日予定のキッシンジャー米大統領補佐官と事前協議制について話し合うと国会で言明したことを紹介している。

 さらに国政関連の記事では「政局、新段階へ/衆参で若手連合へ活発化」や「福田氏が政権構想/〝日中打開に明るい見通し〟」と、自民党の総裁選に向けた党内の派閥の動きなどを伝えている。

 このほか、ストックホルムで開かれた国連の人間環境会議で各国の環境問題についての討議が始まっていることを紹介する記事では「むしばまれた国土、率直に反省/GNP優先は誤り/大石長官、環境会議で演説」との見出しで、日本の首席代表として出席した大石武一環境庁長官の演説を紹介している。その中で大石長官は、「公害先進国」の日本を念頭に「日本は高度経済成長の反面である深刻な環境破壊に直面した。より大きいGNPが人間幸福への努力の指標と考え、これに最大の情熱を傾けたが、この考えが誤りであることに気づいた」と述べ、それまでのGNP優先の方針が誤りだったと反省する演説をしている。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。