オキナワモズク配偶子の雄雌を判別 OISTなどのチームが検査法確立 交雑育種での品種改良が可能に


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モズク盤状体を用いたPCR検査の結果

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)と沖縄県水産海洋技術センターの研究チームは9日、見た目では判断できないオキナワモズクの「配偶子」の雌雄を判別するPCR検査法の開発に成功したと発表した。これにより褐藻では世界初となる交雑育種による品種改良が可能になったほか、モズク養殖に適した種(盤状体)の判別もできるようになり、モズク類の収穫増加につながりそうだ。

 OISTは今後、県水産海洋技術センターや恩納村漁協と協力し、この検査法を用いた養殖試験を開始する。また高水温耐性を持つ交雑モズクの作出やイトモズク、昆布、ワカメへの応用なども視野に入れる。

 県産モズク類の生産量は直近10年は8千~2万3千トンで推移している。モズク養殖は①出芽が少ない②網から芽が剝がれ落ちる「芽落ち」③海水温上昇などの影響による生育不良-という3つの課題があり、生産量が安定していない。

 今後、気候変動で海水温上昇が予想されることから、高水温耐性を持つ新たな品種を作る必要性がある。しかし、モズクは花が咲かず雌雄判別が困難なことから交雑育種は実現していない。

 モズクは染色体1組の「単相」の種(盤状体)から放出される雌雄の配偶子が接合し、染色体2組の「複相」の盤状体となる。それが成長し、食用のモズク(胞子体)となる。雌雄の配偶子は見た目で判別できず、単相と複相の盤状体も見た目で判別できない。

 研究チームはこれまでに解読したオキナワモズクの遺伝子情報を活用して、オキナワモズクの雌雄関連遺伝子を9つ同定した。この9つの遺伝子に対するDNAマーカーを作成し、PCR検査法を確立させ、雌雄判別ができるようになった。PCR検査により雄雌両方の遺伝子を持つ複相の盤状体を選抜することも可能になった。

 OISTマリンゲノミックスユニットの西辻光希博士は「DNAマーカーにより、モズク養殖に適した複相の盤状体を早く簡単、正確に確認できるようになった。モズク養殖の課題のうち、出芽が少ないという課題を完全に解決できる。残り2つの課題も交雑育種を進めることにより解決したい」とコメントした。

 研究結果は9日、科学雑誌「Phycological Research」に発表された。
(玉城江梨子)