「里親と信頼関係欠如」 委託解除、児相の問題指摘 沖縄県調査委「子の声聞かず」


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 那覇市の50代の夫妻が、生後2カ月から5年以上養育していた児童の里親委託を、児童相談所から解除された問題を巡り、外部有識者による調査委員会が10日、中間報告を発表した。同日、委員長を務める日本大学の鈴木秀洋准教授が会見し、県の福祉行政について「子どもを権利主体としたソーシャルワーク、組織マネジメント、里親との対等的な信頼関係を構築する意識が欠如していた」と問題点を挙げた。 

 中間報告では、委託措置解除にかかる県側の対応の問題点を列挙。1点目に子どもの声を聞かず、実親・里親に対応したとし「低年齢児でも丁寧に聞くことが必要だと考えるし、本件の児童は十分意見を言えると考えている」と強調した。

 2点目に、実親ではないと伝える「真実告知」が法的な義務として里親に課せられているかのような誤解をしていたことなど、県側に法的知識や医療知識の軽視があったと指摘した。

 県側の記録などから、組織として判断が必要な内容について、職員の個人的判断を放任したり容認したりと、組織マネジメントの問題も浮かび上がった。1月5日に里親委託を解除する前に、一時保護施設ではない預け先に打診をしていたことも明らかにした。

 経過記録の正確性に疑問がある記述が多くあったと紹介。「恣意的だったり、不足していたり、事実と異なる記述がある」と述べた。その他に、福祉対応の放棄、専門的知見を集めたケースワークの欠如、本庁と児相の連携不足、審査部会の軽視―を問題としてあげた。

 県は4月1日、里親委託解除問題を検証するため外部有識者3人による調査委員会を設置していた。委員は鈴木委員長のほか、琉球大学の上間陽子教授、名護療育医療センター医療顧問の泉川良範医師。委員会は児童や実親、里親、児相職員ら関係者の聞き取りなどを進めていた。