復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉6月12日「『日本列島改造論』を発表」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年6月12日の琉球新報1面は、「〝頭越し〟今後はしない/対日関係を重要視/キ・補、佐官/米中接触で〝確約〟」との見出しで、来日中のキッシンジャー米大統領補佐官と福田赳夫外相ら閣僚経験者や与野党幹部、メディア幹部らと会談した様子を紹介している。記事ではキッシンジャー補佐官は会談の中で「中国問題などをめぐって生じている日米関係の〝ひび割れ〟を埋めることに精力を注いだ」と説明している。

 日本平和委員会の定期大会の様子を伝える記事では「全国的に基地調査/返還後の安保変質を追及」との見出しで、在日米軍基地と自衛隊基地の全国調査を実施する運動方針を紹介している。「今後在日米軍基地と自衛隊を全国的な規模で調査、米軍の輸送実態を追及することにより、日米合同の軍事体制、ニクソンドクトリンに組み込まれた自衛隊の役割り、沖縄返還後の安保条約の変質性を暴露、国民に訴えるという運動方針案が承認された」と記している。

 日米の議員や民間レベルで日米関係を考える、静岡県下田で開かれている「下田会議」の記事では「60年代の発想に低迷/日米民間会議、日本の遅れみせつける」との見出しで会議の様子を伝えている。「浮き彫りにされたのは、日米関係がすでに新しい競争の時代にはいったこの段階で、協力関係の樹立をめぐって日米関係の認識に隔たりがあるということだった」と紹介している。

 中央政界では、ポスト佐藤を巡る自民党内の派閥争いが激化しているなか、田中角栄通産相が「日本列島改造論」の著書をまとめ、内容を発表したとの記事も掲載している。見出しでは「『日本列島改造論』を発表/事実上の出馬表明?」と、著作出版が自民党総裁選への布石かとの憶測も含めて紹介している。

 知事選の運動に関連しては「両派、中部に大動員/流動する支持層に〝危機感〟」との見出しで、教宣ビラや宣伝ビラの配布などに全力を上げている様子を伝えている。選挙コラムの選挙レーダーでは「権威失墜の〝地方ボス〟」との見出しを掲げている。「ある参謀は『これまで部落の区長や有志といわれる連中を押さえれば、部落ごと票を固めることが出来たが、今回はどうもうまくいかん。世はまさに意識の分裂時代だョ』と浮かぬ顔」と伝えている。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。