犯罪被害者支援「ゆいセンター」運営ピンチ コロナで寄付減、相談は増えたのに 沖縄


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄県庁

 沖縄県は犯罪被害者等支援条例の制定に向け、県議会6月定例会で提案する方針を示している。だが、県内唯一の早期援助団体として認定を受ける「沖縄被害者支援ゆいセンター」の運営は厳しい状況にある。事件や事故に巻き込まれた被害者や、その家族らに寄り添った支援に取り組む同センターの運営費の半分以上は、活動に賛同する個人・企業からの会費や寄付に頼る。コロナ禍以降、寄付金は目減りし、財源は逼迫(ひっぱく)している。

県は条例提案へ

 「公用車が確保ができず、スタッフは自家用車で現場に向かう日もある」。沖縄被害者支援ゆいセンターの備瀬進事務局長は話す。犯罪に巻き込まれた被害者や関係者の心身的負担の回復・軽減を図るため、カウンセリングや弁護士による法律相談のほか、通院や裁判の付き添い、各種手続きなどをサポートする。スタッフ約40人は非常勤で、犯罪被害相談員、支援相談員の委嘱を受け個別の事情に配慮した支援をする。

 2020年度、同センターに寄せられた相談は1161件(前年比212件増)あり、過去最多だった。一方、支援活動などに充てられる20年度の収入は、前年比で約551万円減の約2509万円。個人や団体からの寄付金が大きく減少した。

 同センターの20年度の収入は、県や県警からの委託費や補助金(47%)と、賛助会員らによる会費(約28%)と寄付(24%)などで、賛同する団体や個人に支えられている。

 備瀬事務局長は「被害者のケアには金銭的な支援も必要。そのための財源確保は喫緊の課題のひとつだ」と話す。運営を下支えする賛助会員数は22年3月末現在で、2024人(前年比90人減)、236団体(同7団体減)と減少傾向にある。

 相談者は原則、カウンセリングと弁護士相談が各1回、無料で受けられるが、被害者が多くなる大規模な事件事故が発生した場合の対応は想定されておらず、予算のめども立っていない。また、使途に制限が設けられている助成金もあり、被害者ニーズに寄り添った支援には汎用(はんよう)性の高い財源が求められるという。

 ゆいセンターでは条例の制定で、支援活動が着目され県民全体の意識啓発につながればと期待を寄せる。「他県では犯罪被害者支援に特化した条例があり、見舞金などの公的支援も充実している。今後も相談員の育成に力を注ぎ、活動への理解を求めて支援の輪を広げていきたい」と制度や支援の充実を訴えた。 (高辻浩之)