復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉6月17日「佐藤首相、引退表明へ」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年6月17日の琉球新報1面は、「佐藤首相、引退表明へ/総裁選へ火ぶた/きょう自民議員総会」との見出しで、国会閉幕に伴い佐藤栄作首相の引退と、ポスト佐藤の政局争いに注目が移っていくことを伝えている。記事の前文では「自民党内の大勢は、十七日の首相発言を事実上8年の佐藤政権の歴史にピリオドを打つものと期待しており、来週の正式辞意表明、各候補の出馬声明を待たず総裁選の火ぶたが切って落とされる。内外の諸情勢の目まぐるしい激動の中で、次期政権をだれがになうかは、戦後政治の転換の方向を決定づけるものとして、内外の強い関心を集めており、7月上旬に予想される自民党大会まで息詰まる熱戦が展開されよう」と予想している。

 国会の閉幕に関連しては「『国鉄』『健保』ついに廃案/波乱の通常国会閉幕」との見出しで、閉幕した国会での法案論議の内容を紹介している。

 前日から報じられているベトナムでのキャセイ航空墜落事故の続報で「F4との衝突/キャセイ機墜落で『南』政府軍」との見出しで、南ベトナム政府軍のスポークスマンの発表として「①F4ファントム戦闘爆撃機との衝突②C46輸送機との衝突③自爆―の三つのうちF4ファントム機説が最も有力とみている」と伝えている。さらに関連記事で「パラシュート目撃」との見出しで「米軍当局は空中衝突するような行方不明機はないといっており、爆発原因はナゾに包まれたままだ」と指摘している。一方で、事故が起きた空域にいたヘリから航空管制塔に「事故直後に四つのパラシュートを目撃したことを報告した」との情報も伝えている。

 ほかの記事では「特別任務のB52飛行/田英夫氏、米軍資料もとに追及」との見出しで、グアムのB52戦略爆撃機が小笠原付近を飛行し、嘉手納のKC135給油機から給油を受けたとされる問題が参院外務委員会で取り上げられたことを報じている。

 知事選と県議選の記事としては「土・日曜に最大動員/大票田・中部、那覇に攻勢」との見出しで、選挙運動の高まりを伝えている。

 選挙関連記事の選挙レーダーは「もはや味方も敵のうち」との見出しで、「終盤の選挙ではつきものの内ゲバがそろそろ出はじめた」と紹介している。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。