専門家「親のストレス、子に」 家事などの負担のはけ口 児相通告過去最多


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 虐待の疑いがあるとして2021年に県警から児童相談所への通告が1043件で過去最多になった要因について、県警少年課の大城勉次席は「世間の児童虐待に対する理解が深まり、子どもの泣き声など虐待が疑われる事案に関する110番通報が増加し、通告数を押し上げた」と指摘した。「虐待が疑われる場面を目にしたら、迷わず警察に情報を寄せてほしい」と呼び掛けた。

 虐待のうち、身体的虐待の通告件数も増加傾向にある。県内の児童相談所に長年勤めた後野哲彦さんによると、しつけと称して親が体罰を容認している現状がいまだにあるという。

 虐待が減らない原因について「親族や地域との関係が希薄な家庭が孤立しやすくなった。さらにコロナが状況を悪化させている」と分析する。子どもの在宅で増える家事などの負担が親のストレスになる場合があるという。「追い詰められた家庭のストレスのはけ口が、弱い子どもに向かっている」と語った。虐待の根源には、夫婦間も含めた家庭内の不平等な関係性があるとし「母親1人に子育ての責任を負わせないための地域や環境づくりが必要だ」と訴える。

 虐待による緊張状態が続くと、子どもの脳に悪影響が及ぶという研究結果があることを説明。「子どもに安心できる場所を提供し続けることが必要だ。『あなたを大事に思っている』といつでもメッセージを出す人が周囲にいれば、自分が大切な存在だと気づくことができる」と話した。
 (友寄開、古川峻)