復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉6月18日「混乱と不安残した首相/いぜん〝基地の島〟」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年6月18日の琉球新報1面は、「自民党総裁選動き出す/4候補が決意表明/早くも中間派工作へ」との見出しで、佐藤栄作首相の引退表明を受けて本格化する自民党総裁選で、ポスト佐藤を狙う福田赳夫氏と大平正芳氏、田中角栄氏、三木武夫氏の4氏の動きを詳述している。そばには関連で「福田、大平両氏が出馬表明/福田氏 信頼される総裁に/大平氏 心のふれあう政治」との見出しで、福田・大平両氏がはやばやと出馬表明したとの記事を掲載している。さらに田中氏も「田中氏、総裁選出馬を示唆」と近く表明する見通しを示している。

 佐藤首相の引退表明を受けて、この間の沖縄返還などの取り組みを振り返る記事では「混乱と不安残した首相」と佐藤政権の沖縄政策を検証している。別の見出しでは「いぜん〝基地の島〟/通貨・物価対策にも問題」と掲げ、「7年7カ月の在任中の沖縄問題への取り組みは、表面上は『よくやった』という感じも受けないではない。しかし復帰の実態をみると、そう大きな評価はできない」と基地の変わらぬ態様などを挙げている。

 佐藤首相の引退表明で新聞・通信社との会見を拒否し、テレビカメラだけを通して引退表明したことについて「首相発言/言論への認識欠く/在京9社編集局長が抗議」との見出しで、新聞各紙が抗議したことを伝えている。記事では「特に、新聞に対するひぼう的言辞は、民主主義国家において首相のとるべき態度とは思われない」と強く抗議している。新聞だけでなく通信、放送各社でつくる内閣記者会も「憲法を踏みにじるもの」として回答を要求したという。マスコミ各労組も抗議声明を出した。

 知事選と県議選については「きょうから追い込み/投票日まで1週間」と終盤戦に差し掛かってくる様子を伝えている。「選挙レーダー」では「10票とるのに1週間では…」との見出しで、北部地区のムードの低調ぶりを伝えている。「自民・革新の両陣営は北部各市町村に動員をかけているものの、全く腰をあげようとしない」と記事で紹介している。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。