復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉6月21日「核抜き返還は信頼に基づく確約」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年6月21日の琉球新報1面トップは、「米軍輸送機の機体発見/キャセイ遭難現場で/サイゴン各紙報道/米軍など事実確認拒否/ナゾに包まれる真相」との見出しで、南ベトナム中部高原のキャセイ航空機遭難現地近くで墜落した米軍輸送機C46の機体が発見されたとの現地報道を紹介している。日本人客も乗せたキャセイ航空機がベトナムで墜落した事故の続報で米軍機との関連が取りざたされている中で、記事では「米軍当局は、キャセイ機事故前後に行方不明になった米軍機は報告されていないとの立場を変えておらず、またサイゴンのキャセイ航空事務所は米国のなんらかの機関が同航空のC46機1ないし2機をチャーターしていると語ったが、サイゴンの米軍、米大使館、エアアメリカなど関係機関はいずれもその事実さえ確認を拒否するなど、真相はナゾに包まれている」と報じている。

 ベトナムの米軍機に関連しては、「『北』でB52、1機撃墜」と、北ベトナムの南部で米軍のB52戦略爆撃機1機が撃墜されたとの報道を伝えている。ほかに米A7型機1機も撃墜されたといい、北ベトナム上空で撃墜されたアメリカの機体の総数は3661機となったという。

 沖縄返還に伴う核兵器の撤去に関する記事も掲載している。「核抜き返還/信頼に基づく確約/政府、楢崎議員に答弁書」との見出しで、沖縄の核抜き返還の保証をどうするのかという、社会党の楢崎弥之助議員の質問に対する政府の答弁書を紹介している。その内容は「核抜き返還は日米最高首脳間の相互理解と信頼に基づく確約で協定でも条文化されている」「そのため核抜きの完全実施には、なんの疑念も抱いていない」「これまで沖縄で行われていた第3国軍人の訓練は復帰後はいっさい行われていない」「ベトナムの近況との関連で米軍基地の使用が活発化しているのは事実だが、これらはすべて事前協議の対象外の行動に限られている」と政府は答弁している。

 知事選に関連しては「両陣営〝3日戦争〟に総力/県知事選、劣勢地区にテコ入れへ」との見出しで、最後の追い込みにかかっている情勢を伝えている。この日の「選挙レーダー」は「すっかり若返った両県知事候補」との見出しで、「本土から支援にきたある自民党の先制『屋良さんのたてジワは一体どこに消えたのだ。まったく別人だよ』といえば、革新のある人は『背広のポケットに右手を引っかけた、官僚然としていた大田さんもすっかりそれが抜けている』と評していた。まったくその通りで、全県を一巡して久しぶりに那覇での立会演説に顔をみせた両候補の〝変身〟にびっくりする人も多かった」と紹介している。

 このほか、中央政界の自民党総裁選の動向も大きく紹介。「三木、田中氏きょう出馬表明/中間派、来週初め態度決定」「福田氏、激動の時代へ転換/平和大国の設計発表」「中曽根派、きょう態度決定へ/党内に大きな波紋」と、各派閥の動きがあわただしくなっていることを伝えている。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。