「戦争は全てを破壊する」 ウクライナから沖縄へ避難の2人 米軍機騒音で思い出す故郷の恐怖


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激戦地の状況を語るコマハ・ルドミラさん(左)とツビリューク・ナディーヤさん(右)=18日、うるま市

 ロシアによる侵攻が続くウクライナから、5月に沖縄に避難したコマハ・ルドミラさん(53)とうるま市の保育園で働く娘のツビリューク・ナディーヤさん(33)が18日、うるま市で本紙の取材に応じた。沖縄で「台湾有事」の報道に接し、自分たちが侵攻前に置かれていた状況を重ね「戦争は全てを破壊する。争いを止めなければいけない」と訴える。

 西部ザカルパッチャ州に住んでいた2人はロシア侵攻前、侵攻の見立てを伝えるニュースを「うそだろう」と考えていたという。2月24日、ルドミラさんに首都キーウに住むめいから「爆弾が落ちている」と混乱した様子で電話があった。キーウから、おいの住む郊外のブチャに行くよう勧めた。激しい攻撃が加えられることになるとは知る由もなかった。

 ブチャで、めいとおいの家族は、砲弾が降り注ぐ中で眠れぬ一夜を過ごした。翌朝、脱出してルドミラさんたちの元へ来ることができたが、車が渋滞し橋が壊され、後列にいた多くの人が取り残されたという。その後やってきたロシア軍は民間人を虐殺した。

 ルドミラさんたちのいた西部でも毎日、空襲警報が鳴った。ブチャの戦火から逃れたおいの子どもはルドミラさんに何度も尋ねた。「なぜ私たちを殺したいの」「なぜ良い子だったのに殺されてしまったの」。友達が殺され、自由に外で遊ぶこともできない子どもたちの心理状況に心を痛めた。

 ナディーヤさんは3月末、予定していた英語教師として働くため一人、沖縄に向かった。もう家族に会えないかもしれないと思うと胸が張り裂けそうだった。機上で「もう一度家族に会えますように」と祈った。ナディーヤさんの受け入れ団体などの協力で5月、ルドミラさんは娘2人、息子、8歳の孫の5人で沖縄に避難した。毎日、現地の夫らと連絡を取り、携帯電話のアプリで危険情報を確認している。

 沖縄でも、米軍機が飛行する音で当時を思い出すなど、ルドミラさんの恐怖は消えていない。台湾有事を巡る報道に触れ、自分たちがロシアの侵攻を信じていなかったように戦争になることを懸念する。2人は琉球の歴史に触れ、文化やしまくとぅばを「もっと知りたい」と顔をほころばせた。戦争をしないためには異なる歴史や文化を理解し「たとえ人と人との間でも争わないこと。小さな争いが大きな火種になる」と話す。

 ルドミラさんはこれ以上、戦争が世界のどこの地域にも起きないことを願う。「77年前に起きたことが二度と起きないように願っている。沖縄の平和のために毎日祈り続けたい」 (中村万里子)