部活動の教育的効果 石原端子(沖縄大学准教授)<未来へいっぽにほ>


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石原 端子(沖縄大学准教授)

 部活動の意義とは何だろう。先日スポーツ庁が公表した「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」には、「人間形成の機会や、多様な生徒が活躍できる場」「自主性の育成」等という言葉が並んでいる。一見、それらの文言に首肯してしまいそうになるが、その教育的効果について立ち止まって考えてみたい。

 私の講義では、2013年から継続して部活動でのハラスメント体験を尋ねている(未公表)。ここ数年「体験あり」と回答する割合が20%当たりで下げ止まり、小学生の頃からハラスメントを体験している学生も多い。確かにハラスメント体験のない学生は増えてきたが、単純にホッとしてもいられない。

 例えば自分の意見がない、グループミーティングが苦手、自身の専門競技のトレーニングメニューを自分で作成したことが一度もないという学生たちがいる。彼らはこれまでコーチの指示通り練習をこなしてきたというが、授業でメンタルトレーニングやトレーニング理論を扱うと「現役の時に知っていれば、もっとパフォーマンスが上がったのに」と嘆く。

 もしかすると、部活動に関わる大人が、彼らの自主性の芽をつんでしまってはいないだろうか。部活動を通して高められると期待されている「非認知能力」も、もっと高めることができるのでないか。

 これまで献身的に部活動指導に尽力されてきた方々に敬意を持ちつつも、このような観点から、コーチングを見直す時期にあるのではないだろうか。部活動が、大人にとって聞きわけのいい、都合のいい子をたくさん育てる機会になってはいないだろうか。