<「島守の塔」出演者インタビュー>吉岡里帆さん(県職員役) 戦争体験、伝えたい


社会
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映画「島守の塔」の公開を前に取材に応じた吉岡里帆さん

 ―映画「島守の塔」の公開を前に今の気持ちは。

 「沖縄戦は映画として描くのが難しいテーマだと伺っていた。五十嵐匠監督の強い思いと熱を感じ一緒に取り組もうと思った。映画が無事に完成し、すごく意義のある作品になったと思うので、映画館で観客に届いたらいいと思う」

 ―撮影にはどう臨んだか。

 「沖縄戦の資料、当時の県民の思いを記した文献を読ませてもらった。実際に当時、(けがの)治療が行われ、住民が逃げ込んだガマを見学に行った。何カ所か回った。お茶わんとか、当時、人のいた形跡が残っている場所がたくさんある。恐怖と悲しさ、苦しい情念みたいなのが残っているような感覚があった」

 ―撮影で心懸けていたことは。

 「父方が広島県出身で祖父母から、戦争で体験した話をたくさん聞いていた。戦争を知らない世代が歴史をちゃんと知り、知った上でどうそしゃくするか。自分は役者業なのであの思いを乗せてお届けできたらいいと思った。当時の教育によって本来は学生として勉強して友達と遊んで、仕事を伸び伸びやって、未来があったはずなのに、失われていった命に対して心が押しつぶされるような思いに何度もなった。その悲しみを伝えようとするには、やっぱり想像以上にエネルギーを込めないといけないと思っていた」

 ―映画で得た気づきや意義は。

 「今はフェイクニュースとかが多くて情報を取捨選択しないといけない時代。映画でも新聞で情報を伝える人の目線が描かれている。本当の情報を伝えたいのに伝えられなかった、あの当時の人たちの思いとか、一方で本当は勉強がしたいけど、お国のために頑張るんだと言って戦った少年の思いとか。こうしたかったのにという、いろんな思いがあった人たちの闘いでもある」

 「今は自由に、平和に過ごせて自分で何かを選択して発信したり、受け取ったりできる。そういう自由を実感してもらえると思うし、反対に正しい情報をちゃんと受け止めることの重要性も見方によっては伝わるのではと思う。何より歴史をちゃんと届けることが、私はすごく大事なことだと思っている。伝えられることに意義を感じている」 (斎藤学)