沖縄国際大学産業情報学科の学生19人が、那覇市、NHK沖縄放送局と共同して、老朽化で閉館した那覇市民会館のデジタル保存に取り組んでいる。すでに3Dデータ上で建物内の散歩が体験できる段階で、3月には那覇文化芸術劇場なはーとでデモ展示を実施した。大ホールの緞帳(どんちょう)に描かれた鳳凰やエントランスホールのヒンプン、市民らのさまざまな催しの会場になった中ホールなど、まるで開館当時にタイムスリップしたような感覚を味わうことができる。
那覇市民会館は大地震の際に崩壊の恐れがあるとして、2016年10月から閉館している。3Dデータでは、コントローラーを使って館内外を歩き回ることができる。緞帳の金粉や設置されていたスピーカーの向きなど、過去の資料写真も頼りに緻密に再現されている。
企画は昨年12月から本格的に始動し、市の許可を得て館内を撮影、3次元でかつての様子を保存した。多くの人が体感できるよう、どのようなコンテンツで公開できるか検討している。
取り組む学生の中には那覇市出身者もいる。3年生の具志鈴さんは「小さい頃、合唱コンクールで舞台に立ったことがある。あの頃はあまりに気にしていなかったが、ヒンプンや赤瓦など沖縄らしさにあふれていた建物だったと改めて感じた」と懐かしそうに話した。
学生たちを指導している大山健治講師は「ただ懐かしむだけではなく、地域貢献や沖縄の日本復帰を振り返るコンテンツにしたい」と話し、今後の活用方法でさらにデータの価値を高めようと方法を模索している。
(嘉数陽)