【記者解説】出生数減、予想より大幅に早く 危機感持った対策が必要 沖縄県人口減


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 りゅうぎん総合研究所の将来人口推計は、これまで全都道府県で唯一、出生数から死亡数を差し引いた人口が「自然増」となる沖縄県だったが、2022年以降は全国同様に減少に転じる見通しを示した。人口減と少子高齢化による人口構造の変化は、社会保障制度や労働市場、財政の持続可能性に影響を及ぼす可能性が出てくる。

 婚姻数や妊娠届出数の減少というコロナ禍の影響が現れており、りゅうぎん総合研究所の金城毅上席調査員は「年間出生数の減少速度は政府の予想より大幅に早まっている。県や市町村も危機感を持って対策を講じる必要に迫られている」と警鐘を鳴らす。

 自然増減のポイントとなる出生率は16年ごろから減少傾向にある。背景には未婚化や晩婚化に加え、経済的理由などから結婚をしても子どもを持たない選択をする人が増えたことも挙げられる。出生率が高い25~39歳の人口が減っていくため、合計特殊出生率が大幅に上昇しない限り出生数は増加しない。

 島しょ県の沖縄では進学や就職で、子どもを出産する女性の県外流出が多いことも出生数減に影響している。短期間で出生数や婚姻数の減少に歯止めをかけることは難しい状況だからこそ、行政には少子化対策として若い世代の出会いや将来不安の解消、結婚から妊娠、出産、子育てと切れ目のない支援をすることが求められる。

 外国人についても毎年転入者がいるものの、大半は語学学校などを卒業後、より賃金の高い県外へ流出する傾向がある。コロナ収束後に再び転入者が増えたとしても、定着率を底上げできなければ抜本的な解決にはつながらない。外国人にとって魅力的な生活環境や労働環境の整備を実現できるかが、今後の鍵となりそうだ。
 (当銘千絵)