価値を見落とさない 石井恵理菜(中部報道グループ)


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written by 石井恵理菜(中部報道グループ)

 外国人の友人が引っ越しに向け家具を売りたいということで、日本語を話せない友人に代わり、リサイクル店とやりとりした。査定してもらったのは、半年前に10万円で購入したというソファ。のんきに「2万~3万円で売れたらいいね」と話していたが、提示された額は5千円。さすがにこの額を友人に伝えられず、「売るのは待とう」とだけ伝えた。後々調べたら相場価格のようだった。

 先日、沖縄市立郷土博物館の新収蔵品展を取材した。地域の方が寄贈した、戦後使われた生活用品や野球のバットなど約200点が並ぶ。収蔵品一つ一つに、ストーリーがあり面白い。

 中でも印象に残っているのは、市内の70代男性が寄贈した「カマンタ」。戦後沖縄で使われた、竹とススキでできた鍋ぶただ。男性によると、当初リサイクル店に持ち込んだところ100円と言われたという。納得がいかず博物館に持ち込むと、収蔵品として展示されることになった。戦後の生活様式がうかがえる貴重な資料だという。

 場所や時代が変われば物の価値も変わる。博物館によると、歴史的価値がある物と知らずに捨てる人が多いという。断捨離は「博物館の敵」のようだ。いろいろな人や物、出来事に出会えるのが記者の醍醐味(だいごみ)だと思う。価値やその面白さを見落とすことなく、発信していきたい。

(中部報道グループ)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。