B円、復帰前の公衆電話、木炭アイロン…沖縄の雑貨店がまるで「戦後博物館」 レトロな品ずらり 与那原の「マルサ」


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 【与那原】沖縄県与那原町与那原の親川通りに、築70年になるレトロな日用雑貨店がある。店名は「マルサ」。懐かしい食器や大きな金だらいなど、量販店ではあまり見かけない掘り出し物が並ぶ。店の奥へと入ると、米統治時代の証書や英語で書かれた企業免許申請書、B円の印紙などが展示され、復帰前後に使われた公衆電話や当時の広告看板などもある。店舗全体がまるで「沖縄戦後博物館」のようだ。

「若夏国体」の旗や記念品、親子ラジオなど、マルサにある懐かしい物について話す崎山宗秀さん=与那原町与那原の同店

 店を切り盛りするのは崎山宗秀さん(74)と妻の笑美子さん(74)。80年以上前、宗秀さんの父・宗徳さんが「崎山金物店」を創業した。沖縄戦の後、あめ玉を作ったり、仕入れて売ったりしながら資金をつくり、1952年、親川通り沿いに店舗を建て、再スタートした。宗秀さんがのれん分けをして、別店舗でマルサを開業する。72年の復帰の年に崎山金物店が西原町へ移転して、宗秀さんのマルサが建物を引き継いだ。

 珍しいレトロな物が多い同店。木炭アイロンや、メートルとインチの両方で計ることができる折り尺、町内の有線のラジオ局から各家庭につないだ「親子ラジオ」の子機、若夏国体の記念品と旗、78年の交通変更(730)前に標識にかぶせていた「(昭和)53年7月30日から車は左」のカバーもある。これらレトロな品々の一部は販売も可能という。また、米国人が1953年に撮影した同店の写真もある。

日用雑貨店「マルサ」

 宗秀さんは「(復帰前の資料など)ここにあるのは親が残した財産なので、できる限り大事にしたい。年配の方には懐かしさを感じて見てもらい、若い世代には戦後の沖縄の発展や貴重な資料を間近で見てほしい」と強調した。

 宗秀さんによると建物は雨漏りし、老朽化が著しいという。「バブル前までは忙しくて繁盛したが、近くに大型量販店が開店して経営的にも苦しい」と明かす。一方で「近所の人は『辞めないでよ』と言ってくれる。遠くから来てくれるお客さんもいる。できる限り続けたい」と笑顔を見せた。

(金城実倫)