ウサギは寂しいと死んじゃうの!? 周本記世(がじゅまる動物クリニック院長)<未来へいっぽにほ>


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周本 記世(がじゅまる動物クリニック院長)

 人間も動物も、生物種にかかわらず、赤ちゃんはとても愛らしい。だからといって「どんどん増やそう!」とはならないはずだ。わが家には4人の子がいるが、親が責任を持って育てるためにはやはり限度がある。

 動物の飼育も全く同じだ。一部の学校飼育現場ではその限度を考慮せずに放置した結果、近親の繁殖が繰り返され、多頭飼育、栄養失調、治療放棄、動物同士のけんかによる負傷、死に至る事例が起きている。

 「ウサギは寂しいと死んじゃうの」という言葉は昔のドラマで有名になったせりふだが、これは作り話。ウサギは縄張り意識が強く、未去勢の雄同士で争い負傷することが多い。また繁殖力が強く、雌雄を一緒に飼育すると高確率かつ高頻度で繁殖する。つまりウサギは、個体同士の相性が良い場合を除けば、1羽ずつ空間を分けて飼育することが望ましいと言える。難しい場合は迷わず避妊去勢手術をすることをお勧めしたい。

 かわいい赤ちゃん動物を児童に見せたいという意見もあるだろうが、彼らの目線で考えてほしい。一生懸命お世話しても、次々繁殖して健康状態の悪い個体が増え、生まれた子ウサギも弱って死んでいく姿をなすすべなく見ているのと、たとえ1匹でも、適切な世話をして長く共にいるのとではどちらが動物愛護の精神を育んでいけるだろうか。

 実際、ウサギ好きな私の子供は、小学校で前者のケースを経験し、ひどく心を痛めた。当時の私は親としても獣医師としてもできることは少なく非常に無念であった。

 命の大切さを本当に学んでもらうために、大人は何をすべきか。獣医師会も協力したいが、まずは仕組みを変えていく必要がありそうだ。学校関係者、自治体の皆さんは、いま一度考えてみてほしい。