復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉7 月12日「弁務官廃官で現地軍は無権限」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年7月12日の琉球新報1面トップは、「日中正常化に絶対確信/政府間交渉の時期/首相、佐々木氏に決意示す」との見出しで、日中国交正常化に向けた田中角栄首相の強い意志を伝えている。日本の政治家として中国に初訪問する社会党の佐々木更三元委員長が田中首相と日中国交正常化について会談した。佐々木氏が国交正常化に決意を打診したところ、正常化に「絶対確信がある」と田中首相は答えたという。記事では「田中首相が真正面から日中政府間交渉による解決を強調したのは、これが初めてである。佐々木氏によると、田中首相は終始、首相自身の手で日中国交正常化を必ずやり遂げたいとの決意を披歴し、政権担当に対するなみなみならぬ自信を示したといわれる」と知るしている。

 沖縄県内のニュースとしては「現地軍は無権限/弁務官廃官で/県、折衝ルートを失う」との見出しで、軍雇用員問題など米軍由来の諸問題解決に向けた交渉は、復帰前は高等弁務官相手にできたが、弁務官が廃止されて現地の米軍司令官は交渉する「根拠がない」として折衝にならない事態となっていることを紹介している。記事では「屋良知事は全軍労問題について米軍との交渉ルートが整備されてないことを痛感したといい、11日にも防衛施設庁の労務担当官を招いて、米軍と交渉するためのパイプを設置することで話し合うことにしている」と記している。

 B52米戦略爆撃機の嘉手納基地への飛来に関連して「15日に臨時議会/B52飛来/抗議意見書可決へ/各派交渉会合意」との見出しで、県議会の動きを伝えている。記事では「自民党は安保堅持、本土並み基地容認の立場だが、本土なみの範囲を逸脱するものについては厳重に排除する方針で、この原則からB52の大量再飛来に反対する」「最近、殺人事件が続発し、重大な社会問題になっている。緊張度からいえばB52以上に早急な対策を要する問題であり、臨時議会を開くなら治安問題を含めて取り上げるべきだ―と述べ、臨時議会招集に賛成の意向を伝えた」と記載している。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。