回復の灯を消さないで 経済と対策「両立を」 県内コロナ過去最多 繁忙期目前、県内各業界願い強く


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アクリル板など感染対策がなされた店内で、消毒をしながら客を待つ飲食店のスタッフ=12日午後、那覇市久茂地(小川昌宏撮影)

 県内の新型コロナウイルスの感染者数が過去最多となる3436人を記録した。本格的な夏の観光シーズンを目前に控え、着々と受け入れ準備を進める観光や飲食関連業者など各業界からは、再び行動制限措置が取られれば回復の兆しが見えてきた客足や売り上げに影響を及ぼすとして、経済活動の継続を求める意見が強い。感染防止と経済活動を両立させる「ウィズコロナ」を踏まえた生活様式も浸透してきたとして、感染者の増加を冷静に受け止める声もある。

 航空会社大手2社によると、7~8月の沖縄発着路線の予約件数は前年同期の約2倍となっており、コロナ前との比較では7~8割程度まで回復傾向を見せている。

 ANAあきんど沖縄支店によると、特に羽田発着便は臨時便を出すなど需要が高く、夏休みや盆の旅行需要を取り込む好機と捉えている。同社の担当者は「感染急拡大が今後の予約動向にどう影響してくるのか不安は拭えない」と語る一方、旅行者の間でも感染対策を取った上で旅行を楽しむ機運が高まっていることから「社としては空港や機内の感染対策を徹底しながら今後の状況を注視したい」と述べた。

 全国的に感染が拡大する中、ホテル業界では大人数の予約のキャンセルが一部で見られる。

 パシフィックホテル沖縄(那覇市)では7月後半に入っていた100人規模の団体の宿泊予約が延期になったといい、國吉眞和総支配人は「夏に向け期待を寄せていた矢先だけに正直厳しい」と肩を落とした。

 ロワジールホテル那覇(那覇市)の武田寛枝総支配人は、ウィズコロナの認識が広まってきたため個人旅行のキャンセルは限定的だと推察するが「行政から行動制限措置が出されれば再び自粛モードが高まるのでは」と危惧した。

 この2年半、時短や休業要請などを何度も受けてきた飲食店。県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長は、ようやく客足が戻りつつある中で、行政が営業制限をかけることには「反対だ」と強調する。「認証店では入り口での検温やアクリル板の設置、換気など感染防止策をしっかりしている。経済を回してほしい」と望んだ。

 旅行商品などを扱うJTB沖縄の杉本健次社長も、現時点で目立ったキャンセルは出ていないとし「観光がコロナを拡大させているわけではないが、旅先での感染対策には気をつけなくてはならない。せっかく回復した観光にブレーキがかからないことを望む」と語った。 (当銘千絵、與那覇智早、玉城江梨子)