ローカル局の番組、字幕は付かないの? 沖縄の聴覚障がい者が感じる「情報格差」 災害時の不安も


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手話で「文字」と「字幕」を表現する県聴覚障害者協会の城間枝利子会長(右)と本田一郎事務局長=那覇市の県総合福祉センター

 「沖縄のローカルテレビ局の番組にも字幕を付けてほしい」。そう訴えるのは県聴覚障害者協会の城間枝利子会長(66)と本田一郎事務局長(57)をはじめとする聴覚に障がいのある人たちだ。字幕がないことで必要な情報が得られなかったり、健常者の家族や友人とのコミュニケーションに食い違いが生まれたりと「情報格差」を感じているという。

 協会では長年にわたり字幕放送の要望をテレビ局に伝えてきたが、県内ローカル局では費用面や人材の整備ができておらず、字幕のない状態が続いているのが実情だ。

 今年は沖縄の日本復帰50年の節目の年。県内のローカルテレビ各局は特別番組を放送し、沖縄の歴史や課題を伝えた。同協会の城間会長は「日本復帰について、スタジオで複数人が対談する番組を見たが、字幕がなく何のやりとりをしているのか分からなかった。沖縄のことを知りたかったが残念だった」と振り返る。

 城間会長の子や孫は健常者だ。「テレビを見て孫が笑っていても私は字幕がないからなんで笑っているのか分からないことがある。テロップだけで判断して会話が食い違うことも。おばあちゃんとして孫と情報を共有したいし、正しい情報を伝えられるようにしたい」と思いを述べた。

 県内ローカルテレビ局の担当者は「聴覚に障がいのある方や高齢者のためにも字幕放送を進めたいという思いはある」と話すが、字幕を付けるための機材設備にかかるランニングコストや管理費、人材確保が厳しくなかなか実現に至らないと説明する。県外の制作会社に業務委託する方法もあるが費用負担が大きく、制作時間もかかるため利用が難しいという。

 報道番組ではニュースの一部に字幕スーパーを取り入れたり、番組スポンサーのテレビ広告に字幕を付けたりしているが、十分とはいえない状況だ。担当者は「字幕放送はテレビ局の大きな課題だ。助成金などを活用しながら一つ一つクリアしていきたい」と語った。

 今年5月には障がい者が必要な情報を健常者と同じように得られるよう支援し、格差解消を目指す「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が施行された。全ての障がい者が等しく情報を取得・利用できるよう国や自治体が施策を進める責務を明記し、事業者にも努力義務を課している。

 本田事務局長は「情報アクセシビリティが進めば、聴覚障がい者の情報選択の幅が広がる。私たちは災害時も不安が大きい。聴覚障がい者と健常者が同一時点・同一内容の情報を得ることができる環境をつくることが大切だ」と述べた。
 (赤嶺玲子)