【深掘り】住宅地に隣接する嘉手納元駐機場は現在も外来機が使用…格納庫建設で住民の基地負担増大の恐れ


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 米軍嘉手納基地内の元駐機場「パパループ」に、米軍が新たに「防錆(ぼうせい)施設格納庫」を建設する計画が表面化し、さらなる基地機能の強化に自治体や周辺住民の反発が強まっている。米軍による町などへの説明によると、格納庫は航空機の塗装などを施す施設で元々は北側滑走路付近に設置されている。移駐によって住宅地から約90メートルしか離れていないパパループ地区へと近づく形となる。

 県道74号を挟んで住宅地と近い飛行場の北側は、地上騒音問題、悪臭被害を住民らが訴え続けており、新たなヘリ格納庫建設計画も持ち上がるなど、米軍は集中的に整備を進める。さらに、高さ30メートルにも及ぶ防錆施設格納庫が設置されることに関し、環境面への影響も明らかにされていない。住民らに「二重三重の被害」が重くのしかかる可能性が出ている。

米側説明の矛盾

 元駐機場パパループ地区は長らく使われてこなかったが、2019年1月から始まった第353特殊作戦群エリアの開発に伴い、同2月から現在まで、MC130特殊作戦機の駐機場として使用されている。その結果、基地と住民居住地を隔てる「緩衝緑地帯」(當山宏町長)がなくなり、騒音被害や悪臭が住居地域へと流れ込むなど、基地被害が一層拡大した。

 一方、第353特殊作戦群に関して、米軍は「予算不足」としてMC130特殊作戦機の格納庫が完成しないと説明し、使用を継続している。第353特殊作戦群エリアの整備遅れを「予算不足」と説明しつつ、パパループに新たな防錆施設格納庫を建設するという、米側の説明に矛盾点が浮かび上がる。

負担軽減まで20年

 「1996年に移転合意後、20年の歳月がかかった」。19日の要請行動で、沖縄防衛局を訪れた嘉手納町議会の仲村渠兼栄議長は、パパループ地区の東側に位置していた旧海軍駐機場を引き合いに、恒久使用化への危機感をあらわにした。

 旧海軍駐機場は96年の日米特別行動委員会(SACO)の最終報告で移転が合意されたが、2017年1月、基地内の別の場所へと移転されるまで、約20年の歳月が掛かった。その間、哨戒機P3やP8などが主に使用し、昼夜問わずに鳴り響くエンジン調整音や悪臭などの被害が住民生活を苦しめてきた。

 パパループに防錆施設格納庫が完成すると長期間に渡って住民生活に影響が出ることは必至だ。さらに新設する施設をあえて住宅地に近い場所へと近づけるという米軍の「住民生活軽視」の姿勢に疑問の声が上がる。防衛局への要請後、町議会基地対策特別委員会の當山均委員長は「われわれの懸念に対して理解は示していたが、本省(防衛省)が動かなければ解決には向かわない」と述べ、日本政府に施設整備の断念を米側に迫るよう強く求めた。

(名嘉一心、池田哲平)