青砥さん講演で中卒、中退者の支援訴え 若年貧困層増に警鐘


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 シンポジウム「今、子ども・若者たちの間に何が起こっているのか!」が4日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館であった。「NPO法人さいたまユースサポート」の青砥恭(あおとやすし)代表理事が「子ども・若者の貧困の実態と居場所づくり」をテーマに講演。高校を中退する生徒が全国でここ数年年間7~8万人、大学浪人を含め進路が決まらず卒業する生徒も約10万人近くいる一方で、就労の受け皿が少なく、多くが無職や非正規雇用につながっていると説明。「大量の貧困層の若者が出現している」と警鐘を鳴らし、中卒者や高校中退者に対する支援制度の早急な拡充を求めた。

 特定非営利活動法人エスペーロが主催し、246人の来場者が耳を傾けた。
 青砥さんは元高校教師で、「さいたまユースサポート」では若者の居場所づくり、就労・学習支援を手掛けている。若者が抱える困難の背景について、産業構造の転換による製造業の減少で、中卒者や高校中退者を受け入れる「セーフティーネットが機能しなくなった」と指摘した。
 若年層(15~34歳)の非正規雇用率は1990年は20%だったが、バブル崩壊で増加し、2015年には47・3%に達したと説明。「十分な給料をもらえないから結婚も子育てもためらう。就職して結婚し、子育てするという普通の人生のコースが、進学しない若者の間で崩壊している」と話した。

「子ども・若者の貧困と居場所づくり」をテーマに講演する青砥恭さん=4日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館
高校中退や引きこもりなど課題の背景を考える来場者=4日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

 不登校や高校を中退した若者への支援制度は、地域若者サポートステーションか、引きこもりを支援する団体にとどまると不備を指摘し「この子たちがどうやって生きていけばいいのか。軍事力の増強よりも若者支援を」と力を込めた。
 青砥さんは学校に代わる多様な居場所と学びの場の拡充、やり直しができる柔軟な教育システムの構築、地域で子どもや家庭を見守る「コミュニティー・ソーシャルワーカー」の配置などを提言した。
 シンポ後半は、スクールカウンセラーの下門美恵子さん、沖大非常勤講師の山内優子さん、元当事者の親で一般社団法人・アトリエみらい理事長の東邦治さんが討議した。