【記者解説】沖縄の観光産業、就業希望者が減った背景は 県民意識調査から見えたこと


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観光客向けの店舗が並ぶ国際通り(イメージ写真)

 沖縄県が22日に発表した沖縄観光に関する県民意識調査の結果からは、観光産業が沖縄の発展に重要と考える人が多いものの、勤務形態や待遇面への不安などから、観光産業の仕事に就くことに対しては消極的な実態が浮かび上がった。就業希望者の減少は沖縄観光の将来を左右しかねず、早急な対応が求められる。

 未就業者の観光産業への就業意向は、新型コロナウイルス拡大以前の2019年に実施した前回調査より低下した。未就業者の子どもを観光産業で働かせたいと回答した親の割合も低下した。

 背景には、コロナ禍で浮き彫りとなった観光産業の不安定さがある。観光産業のイメージを問う質問には、「経営が不安定」が29・3%に上った。人流の停滞がそのまま機会損失につながるという産業の特性から、ダメージが続いている。

 観光事業者の離職も深刻だ。那覇市内のホテルで従業員が新型コロナ拡大前の約4割減となるなど、働き手不足の深刻な状況が続いている。調査では「休みが取りにくい」という回答が38・7%と最多を占めたほか、体力的な負担や残業の多さに対するマイナスイメージも目立った。

 観光産業の復興を目指すためには、第6次沖縄観光振興基本計画で記された「量から質への転換」が必要となる。コロナ禍で県内のホテルは宿泊単価を下げたが、薄利が続けば業界の窮状は長引く。業界全体でサービスの質の向上に努めるなど沖縄観光の付加価値を高め、従事者の待遇を向上させていくことで、観光業を魅力ある産業にすることが求められる。

(與那覇智早)