「老舗の看板だけでは生き残れない」沖縄最古の酒造所がウイスキー製造に乗り出した理由 新里酒造


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ウイスキーの本格製造に向けて輸入した貯蔵用のたるを紹介する新里酒造の新里建二社長=25日、沖縄市古謝の同社

 【中部】現存する沖縄の酒造所で最も古い1846年創業の新里酒造(沖縄市、新里建二社長)は、主力の泡盛に次ぐ新たな収益源として、ウイスキーの製造を本格化させる。2020年にウイスキー製造免許を取得し、麦芽加工などの設備を導入した。23年後半には同社初となる完全自社製造の「ジャパニーズウイスキー」を発売する。泡盛の消費が長期的に減少傾向にある一方、国産ウイスキーの輸出額はこの9年で10倍以上に拡大している。国際的に評価が高まっているジャパニーズウイスキーの本格製造に乗り出す。

 同社の主力商品は泡盛だが、スコッチウイスキーを輸入し、泡盛の古酒をスピリッツ化して香り付けに混ぜたウイスキーも製造、販売している。同社の売上高のうちウイスキーが占める割合は1割程度で、うち7割は海外への輸出という。将来的には売上高の2~3割をウイスキーが支える状態を目指す。

 新里社長は「泡盛が主力商品であることは今後も変えない」とした上で「老舗の看板だけでは生き残れない。新商品も取り入れて多角化し、経営基盤を強固にして泡盛づくりを守る」とする。

 日本洋酒酒造組合の自主基準による「ジャパニーズウイスキー」の定義では、3年以上の貯蔵などが必要とされる。新里酒造は20年5月からウイスキーの完全自社製造に着手したため、商品の発売は3年間の貯蔵を経た後の23年後半を見込む。イギリスから麦芽を輸入し、大麦の発芽や糖化、発酵などを経て、現在は泡盛用の蒸留器で蒸留し、たるで貯蔵している。

 23年にウイスキー製造に適した銅製の専用蒸留器を海外から導入する。現在の年間約9千リットルの製造計画を、23年には約1万2千リットルに引き上げることも検討している。費用は約3500万円で、3分の2は国庫補助を受ける。

 国税庁の資料によると国産ウイスキーの輸出額は2013年に39億8千万円だったが、21年には461億4千万円に伸びた。21年度は20年度比で70%増の急成長だった。九州でも焼酎メーカーが同じ蒸留酒のウイスキー製造に乗り出す事例が増えている。
 (島袋良太)