上昇最大も労使に懸念 県内最賃「不十分」「中小支援を」


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 中央最低賃金審議会が正式決定した2022年度の最低賃金(最賃)引き上げの目安額で、沖縄は30円が目安とされた。

 県内の労働者、経営者からは過去最大の引き上げ水準に見解が分かれた。

 一方、人件費増にあえぐ企業や事業者に対し、支援策を充実させるよう国や県に求める声が相次いだ。

 連合沖縄の砂川安弘事務局長は「目安が過去最高額であることは評価したいが、物価高の状況をみると最賃水準の労働者の暮らしがさらに厳しくなる」と指摘する。「沖縄は離島ゆえに輸送コストが一層かさんで物価に転嫁されている。個人消費が伸びないと経済は回らない。経済回復のためにも1円でも上積みを求める取り組みを、沖縄地方最低賃金審議会でも展開したい」と話した。

 「30円上がったところで焼け石に水だ。これでは労働者の生活は守れない」

 県労働組合総連合(県労連)の穴井輝明議長は目安額が不十分との考えを示し、さらなる上積みを求める。「地方審議会の労働者代表委員には、労働者の暮らしを守るために最賃の上積みを勝ち取ってほしい。同時に中小企業が経営を維持できる方策を議論してほしい」と要望した。

 経営者側からは、燃料や原材料価格が高騰している中での大幅な引き上げ方針に懸念の声が上がった。

 県経済団体会議の議長を務める県商工会議所連合会の石嶺伝一郎会長は、目安額について「物価上昇の影響を考慮している点は理解するが、資源・原材料高騰を価格転嫁できていない企業には厳しさが増す」と指摘する。今後本格化する県内での協議へ「県経済の窮状をしっかりと考慮した議論・検討が行われるべきだ。コロナ禍に苦しむ中小企業・小規模事業者への支援や雇用対策に万全を期してもらいたい」と訴えた。

 沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事は「沖縄の所得を伸ばすべきなのは間違いないが、コロナ禍に加え物価高騰で経営が苦しい中、この目安額ではさらに厳しさが増すことになる」と今後の影響を危惧する。観光業を中心に人手不足が続く現状を踏まえ「最賃の上昇でさらに人手を補えない恐れも出てくる。政府や行政は企業に対する支援策もセットで展開することを求めたい」と語った。 (小波津智也)