沖縄SVなどが取り組む沖縄コーヒープロジェクトは、今年冬から来年春にかけてコーヒー豆の初収穫を予定する。初年度は5千杯分の収穫を目標にしている。プロジェクトに参画するネスレ日本は沖縄コーヒーの産業化に向け、(1)沖縄の気候、土壌に適した品種や栽培法の確立(2)コーヒー豆の収穫体験の実施(3)お土産品として商品化(4)全国に向け幅広いチャネルでの販売―の四つの段階を描く。
深谷龍彦社長は「日本の他の土地では作ることが難しいコーヒーを沖縄で大規模に作れたらすごいビジネスになる。われわれがやろうとしていることは簡単ではない。一つ一つ課題を解決していく」と力を込めた。
■先行農家
沖縄のコーヒー栽培の歴史は古く、1939年5月の琉球新報には熱帯植物調査のため学者が東村慶佐次、今帰仁村のコーヒー園を訪れたという記事が掲載されている。
現在も本島北部では複数の農家がコーヒーを栽培している。
東村の又吉コーヒー園(又吉拓之社長)はコーヒー農場、マンゴー農場のほか、コテージ、キャンプ場、ジップラインを備える観光農園だ。2014年に100本から栽培を始めたコーヒーは、17年に初収穫。その年からコーヒーの収穫体験を実施している。コーヒーの実を収穫、焙煎できる場所は珍しく、すぐに評判となった。
21~22年シーズンはコーヒーの実400キロを収穫した。又吉社長は「露地栽培で農薬も使わない。可能性は感じるが、生産量、精製技術ともにまだまだ」と課題を挙げる。コーヒーだけでやっていくのは「経営的に難しい」とも感じており、特産品化には観光など他産業との掛け合わせが必要だと考えている。
■長い道のり
県は本年度、拠点産地化されていない地域の農作物の栽培状況について市町村を通じて調査に着手した。数多くある農作物の中で「ポスト戦略作物」には何がふさわしいか選定していく予定だ。
今後、沖縄の農作物として行政もコーヒー生産を推進していく可能性はあるのか。県農林水産部は「農作物の栽培法の研究と確立、普及は県の役割だが、県が関わるには、その作物が農業として成立しないといけない」とする。
沖縄SVアグリの宮城尚社長は「コーヒーの特産品化の道のりは長いと思う。栽培法確立のため、県内コーヒー農家が連携して取り組んでいきたい」と話した。 (玉城江梨子)