図書館入口の「平和の樹」すくすくと 寄贈した男性の思い 沖縄・西原町


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小波津仁一さん(故人)が西原町立図書館に寄贈したガジュマルと、「平和の樹」と揮毫した同級生の新川善一郎さん=7月23日、西原町立図書館

 【西原】西原町立図書館の入口に「平和の樹」と名がつくガジュマルがある。開館した2004年8月に小波津仁一さん(故人=小波津出身)が寄贈した。同期生の新川善一郎さん(83)が出版した『心窓去来~我ら同期生~』に、小波津さんが木を寄贈した経緯が書かれた手紙が紹介されている。

 「1958年に高校入学を記念して友人と2人南部一周をし、摩文仁の丘の牛島司令官の自決場所を参拝した後に、岩にぶら下がるように生えたガジュマルを持ち帰った。眺めていると、終戦、平和の思いが湧いてきて、庭に植えると数日で新芽が芽吹き、葉は肉厚で枝は自然に横張りに垂れるような形で成長したので、石を抱かせて盆栽として育てた」などと手紙に記されている。

 新川さんは「仁一は、当時の図書館長の波平常則さんにガジュマル寄贈の話をしたら快諾され、一緒に植えたと聞いている。その後も自分で剪定(せんてい)して管理するつもりだったが、病気になり、2016年に田村敏和図書館長に手紙を書いた」と振り返った。

 小波津さんの妻・恵子さんは「彼は、開館当時の図書館は入り口から玄関までが殺風景で、あのガジュマルが枝を伸ばして大木に成長し、その木陰で子どもたちが遊び、読書をしている姿を夢見ていた」と話した。

 小波津さんらは、西原中学校を1955年3月に卒業した同期生。

 新川善一郎さん、新川武雄さんが中心となり「イクサユの記録を残そう!」と33人の体験記をまとめた喜寿記念文集「戦世を生き延びて」を編集・出版もした平和を希求する世代だ。
 (小波津昭子通信員)