天然記念物のような巨樹名木から身近な街路樹庭木まで、樹木は沖縄の豊かな自然を形作る上で欠かせないものの一つだ。一方、亜熱帯・熱帯の沖縄は日本本土と異なる植生が広がり、病気・病害虫の種類も幅広い。沖縄の風土に根差した樹木をどう保全していくか。その一端を担っているのが“木のお医者さん”樹木医だ。
人と同じように
7月27日、宜野湾市志真志の宜保勝彦さん・洋子さん宅のヒカンザクラを“診断”すべく、相談を受けた樹木医4人が現場を訪れた。病気・病害虫、剪定(せんてい)、移植、土壌のスペシャリストたちだ。
宜保さん宅のサクラは樹齢約50年。近年は咲く花が減り、落ちる葉が増えるといった“症状”が出ていた。4人は枝先や樹皮、根の状態を確かめ、病気・病害虫の痕跡を探る。サクラ本体だけではなく、周囲の土壌を採取して土質を調査するなど“診察”していく。
視覚だけではなく、幹をたたいた響き、皮や土の臭い、手触りといった聴覚、嗅覚、触覚も動員し人体の医師と同じように慎重に進む。物言わぬ樹木との対話は1時間ばかり続いた。
詳しい結果は後日となるが、4人がその場で下した“診断”は「厳しい」。病害虫の浸食のほか、根腐れも確認された。“診断”に当たった一人、元県森林協会常務理事の具志堅允一さんは「異常を感じた時にすぐ診察、治療していれば救えたかもしれない。残念だ」と肩を落とした。
少数精鋭
「もう少し早く相談していれば…」と悔しさをにじませた洋子さん。この家に住み始めた時に父が植えてくれたサクラは「花も枝ぶりも良くて。子どもたちも『オジイのサクラ』と呼び、孫たちも花見を楽しんできた」。家族の思い出が詰まっている。
夫・勝彦さんに結果を話して対応を決めるが「切ることになっても、みんなの心の中にサクラは残っている。ここまで楽しませてくれたこと、喜ばせてくれたことに感謝したい」と話した。
日本樹木医会県支部の生沢均さんは「人と同じく、樹木の病気も早期発見・早期治療が大事だ」と説明。「沖縄の樹木医は25人と少ないが少数精鋭。専門分野を研さんした人材がそろっている。樹木に異常を感じたら、すぐに相談してほしい」と呼び掛けた。
樹木医への問い合わせは日本樹木医会県支部(電話)098(987)1644か県緑化推進委員会のホームページ(https://www.oki-green.or.jp/)の問い合わせフォームまで。
(安里周悟)