【記者解説】国と地方の関係ゆがみ露呈 辺野古設計変更、係争委の「却下」が意味することは


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新たな護岸建設が始まった辺野古の新基地建設現場=2022年3月27日午前10時40分ごろ、名護市

 国地方係争処理委員会の判断は、辺野古新基地建設の軟弱地盤改良工事に伴う設計変更申請を、国が沖縄県に指示して承認させることを認めたものだ。県が工事の妥当性を判断できる仕組みを形骸化させ、本来であれば対等とされる国と地方自治体の関係をゆがめることにつながる。

 県は国土交通相が設計変更不承認を取り消した裁決についても係争委に取り消しを求めていたが、係争委は7月に審査申し出を却下していた。今回の係争委判断は、地方自治体の決定を国の一存で取り消し、国の意向を押し通す一連の手法を認めたことになる。

 全国知事会も、国が自治体の判断を直接否定する「裁定的関与」の見直しについて、沖縄県の提案を受けて国に提言している。係争委の判断は沖縄の米軍基地建設のみならず、国策による各地の施設建設にフリーハンドを与えたことになる。全国の各自治体も、沖縄だけにとどまる問題ではないことを改めて認識すべきだ。

 県は設計変更を不承認にした際、土木・環境上の調査不足などを指摘した。係争委が国による不承認の取り消しと承認指示を是認したことで、県が軟弱地盤改良工事の妥当性を審査した上で出した指摘は無視された格好となる。

 係争委の判断を不服とする県は法廷闘争への移行も検討する見通しだが、国と県の係争は本来であれば辺野古移設を前提としない協議などで解決すべき問題だ。まず、国は県の不承認とした根拠への補足や応答をするのが筋といえる。

(塚崎昇平)