葬儀業界、コロナの遺体に対応苦慮 低感染リスクも安置場所や時間分け他の遺族に配慮 沖縄


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遺族に配慮して、故人名が表示される施設内の電光掲示板には目隠しがされている=19日、豊見城市豊見城の南斎場

 高齢化や新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、火葬場が逼迫(ひっぱく)する中、厚生労働省はコロナで亡くなった遺体について、納体袋やひつぎに感染対策が施されていれば感染リスクは低いとし、葬儀や火葬業界に適切な運用を求めている。ただ、葬儀業界では感染対策や風評被害の懸念から、安置場所や時間を分けるなどの対応が続いており、社会全体に許容されるまでには時間がかかりそうだ。

 中部の葬儀業者によると、感染後に亡くなった人の遺体を自宅に戻すことに対し、遺族の多くは周囲の目を気にして遠慮することが多いという。遺体安置場所を感染の有無で分ける葬儀業者もあり、コロナ関連死以外の遺族感情に配慮した対応という。業者は「行政の考え方も承知しているが遺族の気持ちを優先した対応を続けざるを得ない」とし、社会全体の意識が変わることを期待した。

規定以上の稼働率のため、内壁のレンガがはがれ落ちている火葬炉=豊見城市豊見城の南斎場

 行政文書の表記も業者の判断を迷わせている。火葬許可証には死因が「一類感染症等」と「その他」しかない。二類感染症相当の新型コロナだが、一類感染症等に分類されるため、一般火葬と異なる午後3時以降の対応となる。南斎場(豊見城市)の濱里和宣所長は「明確に『その他』でも可能と案内をしてほしい」と話した。ただ、感染後に亡くなった人の遺体の火葬を一般枠と同じ時間帯で執り行うことには「遺族の考えもあるので状況次第としか言えない」と語った。

 県衛生薬務課は業界の事情なども理解しつつ「現場への浸透はまだまだだが、遺族が別れの機会を失うことがないように周知していきたい」と語った。

(嘉陽拓也)