質向上、憧れる場所に 沖縄観光回復に必要なことは、星野リゾート社長の星野佳路氏<焦点インタビュー>


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コロナ禍でのホテル運営などを語る星野リゾートの星野佳路社長=16日、読谷村の星のや沖縄

 県内では7カ所目となる「星野リゾートBEB5(ベブファイブ)沖縄瀬良垣」を7月1日に恩納村にオープンした星野リゾート。社長の星野佳路氏に、今後のホテル運営方針などを聞いた。

 ―県内ホテルの宿泊予約状況は。
 「これまでは『Go To トラベル』に影響されていたが、最近はキャンペーンの有無にかかわらず予約が入るようになってきた。人々のマイクロツーリズムの意識から、軽井沢や那須などの都市周辺の観光地は戻りが早いが、沖縄などの飛行機での移動が必要な場所はまだコロナ前に戻ったとはいえない」

 ―コロナ禍でのホテル運営の考え方は。
 「これまでは65%ほどの稼働が採算分岐点だったが、コロナ禍では雇用調整給付金を利用することで人件費が下がり、40~50%ほどで採算がとれるようになった。2019年は沖縄観光の3割がインバウンド(外国人旅行客)だったので、その戻りがいつになるか心配する人が多いが、逆にこれまで海外旅行に行っていた日本人観光客を国内に誘致する良いチャンスでもある。今までハワイに行っていたような人が沖縄に来ると、同じように楽しんでも航空機代などで大幅に安くなる。そのような旅行客に向けて、コロナ禍では宿泊単価を上げている」

 ―社員の働き方への取り組みは。
 「星野リゾートには4千人の社員がいる。コロナ禍の経営難などの理由から採用を見送る企業も多かったが、星野リゾートは『人材を維持し復活に備える』を方針として掲げているので、22年度は730人の新入社員を採用した。正社員として沖縄枠での新卒採用も実施している。これからも年間を通しての需要平準化に努めることで、正社員を増やしていきたい」

 ―沖縄での新たな展開予定は。
 「直近で開業の予定はないが、運営する拠点の数は増えている。BEB5瀬良垣に関しては、話があってから半年で開業に至ったため、開業までのスピードは早い」

 ―沖縄観光が回復するために必要なことは。
 「コロナ前は、数は追えていたが、質は追いついていなかった。数に注目してしまうと、インバウンドではアジア諸国など近いところからだけ来て、旧正月の時期だけ混むなどの事態が起きてしまう。インバウンドはリスク分散が大事なので、アジア以外にも全世界から来てほしい。近くて安いから来るのではなく、憧れる場所になる必要がある。そうすればおのずと単価は上がる。沖縄のファンを作りリピーターを増やすために、県の委託事業などで観光客の満足度調査をすれば良いのではないか」 (聞き手 與那覇智早)