沖縄への思い 皮肉で モンゴル800ツアー幕開け


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(右)戦後70年の節目に発表した「himeyuri~ひめゆりの詩~」などを歌う上江洌清作(中)激しく打ち込むドラムで熱狂させる高里悟(左)かき鳴らすギターだけでなく、歌声でも沸かせる儀間崇=16日、沖縄市民会館大ホール(又吉康秀撮影)

 県出身ロックバンド・MONGOL800の新アルバム「People People(ピーポー ピーポー)」発売ホールツアーの沖縄公演が16日、沖縄市民会館大ホールであった。

上江洌清作(ボーカル、ベース)が「音楽の力で、できる範囲でメッセージを込め、沖縄を皮肉ったり、こちょこちょしたり、背中を押したり、何気ない力になれば」と思いを込めたアルバムから曲を次々と繰り出した。沖縄への今の思いを彼ららしいロック調に乗せ、年末まで続くホールツアーの幕開けを古里から飾った。
 ステージ上に設置された巨大な照明が回り、赤く光りながら鳴り響く様子はサイレンを思わせる。その照明のもとで3人が登場し、表題曲の「People People」を歌い上げた。
 「戦争経験者が少なくなる中、事実だけをパッケージしてできた。『ひめゆり』というキーワードだけでも、県外など知らない人に伝えたい」と慰霊の日に動画配信した「himeyuri~ひめゆりの詩~」では、上江洌、儀間崇(ボーカル、ギター)の歌声が響き、高里悟(ドラム)も激しく打ち込む。CMにも起用された「OKINAWA CALLING」では、粒マスタード安次嶺がダンスでゲスト出演し、会場を沸かせた。
 アルバムで儀間が唯一手がけた「NANKURU」。「なんくるならないことを感じることも大きくて作った曲。沖縄でやりたかった」と話す。ギターを三線に持ち替え、響かせる軽快なテンポとは対照的に「不満 あきらめ 慣らされて生きる ナンクルないさと笑うだけ」と皮肉めいた歌詞が印象的だ。
 曲の最後に「黄金の花」や「島人ぬ宝」などの歌詞の一部をつなげた「Beach」や「18、19歳の時に純粋に、無心無欲で作った一番“ピース”な曲」(上江洌)と紹介する「琉球愛歌」など1曲1曲にメッセージがにじみ出る。
 「作ろうとしてできたのではなく、気づいたらできていた」(上江洌)と話したアルバム。前作「GOOD MORNING OKINAWA」発表後は「次は底抜けに明るい曲だけを作ろうと思っていた」というが、今作には戦後70年の節目や現在の沖縄を取り巻く状況を歌った曲が並ぶ。
 「沖縄から発信していかないといけないご時世」(上江洌)と話す時代に生まれたアルバムを携えたライブは12月27日まで続く。音楽は音楽として、楽しみながらどこまで皮肉れるか―。ロックという彼らの表現方法でメッセージを発信していく。(大城徹郎)