予算減額を絡める自民 オール沖縄は細る基盤 沖縄県知事選


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 沖縄県知事選は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設が最大の争点だ。推進する岸田政権は佐喜真淳氏を支援し、経済振興をだしに保守県政の奪還を図る。移設反対の玉城デニー知事を推す野党は、7月の参院選に続く連勝を目指す。

 「普天間返還合意から26年。選挙で県民が分断され、争ってきた。基地問題を終わらせる。普天間が返ってきますよ」。25日、自民党と公明党が推薦する佐喜真氏は那覇市で第一声に臨んだ。「辺野古」の言葉こそ避けたものの移設推進の立場を鮮明にした。佐喜真氏の立場表明には、工事が進む状況や「参院選で移設容認を明言した自民新人の善戦が大きい」(自民選対筋)。経済振興も訴え、野党系現職を約2900票差まで追い詰めた。

 自公政権は経済振興をアメにもムチにも使う。8月末はちょうど政府の23年度予算概算要求の時期だ。内閣府が決めた沖縄振興予算の要求額は2798億円。10年ぶりに3千億円を割り込んだ昨年の22年度予算概算要求よりも200億円少ない。自民は23日にこの額を了承した。

 伏線があった。県選出の西銘恒三郎前沖縄北方担当相は10日の内閣改造で退任する際「前年より100億円ほど引いたらどうか」と官邸側に伝えていた。さらに100億円減らした要求額。自民の閣僚経験者は「佐喜真氏が勝ったら年末の予算編成で増やせばいい」とあからさまに語る。

 3千億円台を求めていた玉城氏は袖にされた格好で、側近は「選挙直前の脅しだ」と憤った。

 かつて自民に所属した下地幹郎元衆院議員の出馬も「保守票を一部奪われる」と懸念材料だ。

 玉城氏は辺野古移設に反対した翁長雄志前知事の支援基盤「オール沖縄」を引き継ぐ。翁長氏は元自民沖縄県連幹事長。立憲民主党関係者は「保守・革新を超え経済界も巻き込んだ枠組みだったが、今は保守系や経済界が離れていった」と指摘する。今回玉城氏は14年の翁長氏、18年の自身の選挙と違い、野党の推薦を受けた。各野党が並んで推す姿を示す狙いだ。

 今年は主要選挙が続く「選挙イヤー」だがオール沖縄系候補は参院選まで4市長選を落とし、勢いに陰りが見える。立民幹部は「必勝を期し、国政での反転攻勢につなげたい」と気を引き締めた。

(共同通信)