沖縄愛、ペダルに乗せ 下地幹郎氏<駆ける・沖縄県知事選2022>上


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支持を呼びかけながら、オレンジ色の自転車をこぐ下地幹郎氏=8月27日、与那原町

 身にまとったスーツにネクタイ、手に抱えたバラの花束までオレンジ一色―。県知事選に立候補した前衆院議員の下地幹郎氏(61)のポスターは異彩を放つ。正面を向くのが一般的な選挙用のポスターで、候補者本人は伏し目がちの横顔だ。

 異例なのはポスター写真にとどまらない。出馬表明は米ワシントンのホワイトハウスをバックにするという「奇策」に始まり、告示後の第一声も支持者を集めずにネットで配信した。型破りな選挙は気まぐれではなく、若年層や無党派の票を掘り起こすための戦略だ。特にSNSを活用する上で目を引く狙いがある。

 一方で貫いている選挙手法もある。街頭演説や企業回りの間、移動はほとんど自転車だ。下地氏は「宣伝カーに乗れば(他候補と)埋没する」と話す。自転車なら移動中も有権者の目に触れる上に、すれ違う人と言葉を交わすこともできる。

 炎天下でこぎ続けても、疲れは見せない。バイクで伴走するスタッフが見失うほどの俊敏さだ。原動力は「沖縄への愛」と笑顔を見せた。

 平良市(現宮古島市)出身で子どもの頃から「島チャビ(離島苦)」を肌身に感じてきた。33歳で衆院選に挑戦し、初当選を果たして計6期務めた。無所属で挑んだ昨年10月の衆院選は落選。心の中にあった知事選出馬に向けて始動した。

 選挙は今回が11回目。支えてきた妻の志緒氏は「今回、本人がとても選挙を楽しんでいるのが分かる。家族としては応援するしかない」と話した。下地氏自身も「とにかく楽しい」と語る。党派や団体に縛られず、実現したい政策を全て掲げることができるからだ。

 そのうちの一つが「国との決別」だ。下地氏は「国に頼らない沖縄をつくることで、沖縄が発展する」と訴えている。自戒も込める。衆院議員として「良かれ」と思って予算確保に奔走し、実現してきたからこそ、国依存の限界を感じた。

 22歳で出会い、政治の師と仰ぐ初代沖縄開発庁長官の故・山中貞則氏の姿勢にも通じる。「山中先生から頂いた基礎を活用し、今度は沖縄がボールを蹴る番だ」。その夢をかなえるため、最終日までペダルをこぎ続ける。
 (’22知事選取材班・明真南斗)


 11日投開票の県知事選は残り2週間を切った。支持拡大に向けて駆け回る下地幹郎氏(61)、佐喜真淳氏(58)、玉城デニー氏(62)の3候補の人柄や選挙運動の様子を担当記者が描く。