生徒指導「子の背景知って」 手引き書改定 広島大大学院教授が講演


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新たな生徒指導の在り方について説明する広島大学大学院の栗原愼二教授=8月19日、糸満市観光文化交流拠点施設「シャボン玉石けん くくる糸満」

 生徒指導の手引書となる文部科学省の「生徒指導提要」が、12年ぶりに改訂される。近日中に公表される新生徒指導提要は、国連の子どもの権利条約を見直し、ジェンダーや発達、家庭状況など、子どもたちの多様な背景や課題に対応できるよう改編された。

 8月19日、糸満市観光文化交流拠点施設「シャボン玉石けん くくる糸満」で、改訂に携わった広島大学大学院の栗原愼二教授を招いた講演会(子どものQOLを高める会主催)が開催された。

 栗原さんは、子どもたちの不登校やいじめ、自殺者が増え続けている原因や背景をひもとき「教育を変える必要がある。新しい指導が求められている」と説明した。

 文科省や厚生労働省がまとめたデータによると、不登校、いじめの認知件数、校内暴力発生件数、自殺者数は年々増加している。

 栗原さんはデータを示しながら、子どもたちの背景について「SOSを出しているのに誰も助けてくれない、だから自己防衛のために(いじめや校内暴力など)攻撃をしている状況だ。学校に期待をしなくなった、諦めたら不登校になる」と分析を示した。「コロナで会話がなくなり、状況はさらに悪化した」ことも付け加えた。

 近年、発達障がいと診断される子や、特別支援が必要とされる子が増えたことや、かつては軽度知的障がいに認定されたIQ70~84ほどの境界知能についても言及した。「彼らが(学級に)いて大変という教員もいるが、彼ら自身が一番大変なんだ。彼らを育てられる環境にいるのは、親と教員しかいない」「平和で民主的な社会をつくるには、それをつくれるような子どもの育成が必要であり、それこそが生徒指導である」と説明し、本来の生徒指導の在り方を確認した。染髪指導やブラック校則などについて「あまりにも視野が狭い」と批判した。

 これからの生徒指導については「子どもたちに何が起こっているのか、その解釈が正しければ(不登校などの増加を)解消できた」と前置きした上で「先生も文科省も、打ち手(指導)が外れていた。これまでの経験則や既存の考え方でうまくいかないなら、その方法は捨てるべき」として、生徒指導の見直しを求めた。
 (嘉数陽)