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「はい上がるルートがない」…食料配布に働き盛り世代も列 続くコロナ禍、物価高騰が追い打ち <県知事選・暮らしの現場から>㊥


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ボランティア団体の食料配布で飲み物やパンを受け取る男性(右端)=2日、那覇市牧志

 台風11号が近づいていた2日、那覇市の牧志公園に人だかりができていた。ボランティア団体による食料配布に並ぶためだ。カップラーメンと菓子パンとパックご飯。一つずつもらってビニール袋に入れると、集まった人々は散っていく。

 「2週間に1回だけど、とても助かる」。年金生活を送る男性(64)がほっとした表情を浮かべる。建築関係の仕事をしていたが、3年前に体力の限界を感じて辞めた。繰り上げ受給のため年金額は少なく、食べていくのにも困っていたところに、物価高が追い打ちを掛けた。

 少しでも安い食材を探すため、スーパーを駆け回るようになった。たどり着いたのは5キロ1180円のアメリカ米。「日本の米と味は変わらないから、良かったさ」と笑顔をつくる。

 食料配布には40代、50代の働き盛りも並ぶ。名古屋で働いていたという男性(44)は、コロナ禍で職を失い帰省したが、県内でも仕事が見つからなかった。生活保護費は約7万円。ドミトリーの宿泊費と食費で消える。携帯電話を解約し、靴が壊れても買えない。「こんな状態では次の仕事を探せない。ここからはい上がるルートがない」。サンダル履きの足元を見つめて嘆いた。

 ボランティア団体の女性は「とにかく給料を上げないといけない。食料は東京より高い。地産地消で食材を安く買えるようにして。継続的に生活できる仕組みをつくって」と語気を強めた。

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 物価高やコロナ禍の影響を受けるのは、自営業者も同じだ。居酒屋と学習塾を経営する女性(41)は、大打撃を受けた居酒屋で協力金、売り上げが落ちた塾で月次支援金を受けたが「二重受給」を指摘され、月次支援金を返還した。「税理士もこんな決まりがあるなんて気付かなかった。どちらの事業も打撃を受けているのに、一方でしか受けられないなんて…」と、言葉を失った。

 今年は感染状況が悪化したのに協力金はない。客足は戻らず、従業員に感染者が出れば店を開けられない。雇用保険料は上がり、電気代も値上げ。借り入れの返済も始まり「今年は支払いの年」と、ため息が出る。

 経営者仲間のシングルマザーは、協力金が所得とみなされ、役所に子ども手当や児童扶養手当が受けられなくなると指摘された。結局、協力金の受給を諦めたという。「支援策がちぐはぐで、支援になっていない。必要なのは先を見通せるリーダーだと思う」と語った。
 (稲福政俊)


 11日投開票の知事選は米軍基地問題や新型コロナウイルス対応などを争点に、論戦が展開されている。暮らしの現場から県政の課題を見た。