〈121〉手術支援ロボット 5Gで遠隔操作も可能


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2020年12月15日の朝日新聞デジタル版に「国産手術支援ロボット『ヒノトリ』初手術に成功」の見出しが出たのを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。

 手術支援ロボットは、もともとは遠隔操作により戦場の負傷者の手術を行うことを目的に、軍により研究開発が始まりました。湾岸戦争終結後に民間に引き継がれ、1999年に「ダヴィンチ」の販売が始まりました。

 日本では、2009年11月にダヴィンチSが薬事承認され、翌年3月より販売が開始されました。その後、2012年4月の前立腺がん手術の保険承認に伴い国内導入数が飛躍的に伸び、現在では約400台が運用されています。これは米国に次ぐもので、日本は世界第2位のロボット保有国になりました。

 泌尿器科領域での適応拡大(腎部分切除術、膀胱(ぼうこう)全摘除術など)だけではなく、消化器外科、婦人科、胸部外科、そして耳鼻科領域でもロボット支援手術の保険適応が拡大され、外科手術の現場は大きく変化しつつあります。

 ロボット支援手術の特徴は、従来の腹腔鏡手術の低侵襲性に加え、高解像3D拡大画像、手ぶれ防止機能や人の手の可動域を超えるロボットアームにより、繊細かつ正確な手術操作ができることです。

 その中心となるのが手術支援ロボットですが、非常に高価な機器で、メンテナンスにも費用がかかるといった問題点があります。

 前述の国産ロボットは、コンパクトでより低い価格設定になっており、今後、国内での運用台数増加が予想されます。さらに、5G通信技術を用いることで、数百キロメートル離れた場所でも、遅延なく操作することが可能となったことから、遠隔手術(オンライン手術)の実証実験も昨年より開始されています。

 離島の多い沖縄県にとって、このような診療形態は、質の高い医療の均てん化に寄与する可能性があるため、今後の進展については注視する必要があります。

(呉屋真人、中部徳洲会病院 泌尿器科)