復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉9月15日「深刻さ増す老人対策/きょう敬老の日」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」した1972年9月15日の琉球新報1面トップは、「合理化反対、権利奪還をかかげて/一斉にハチマキ闘争/全軍労/米軍の圧力に反撃/『就労しても賃金カット』と米側」との見出しで、解雇反対などを掲げて全軍労が15日からハチマキ闘争に入ることへの反応などを掲載している。そでには「〝ハチマキは国内法違反〟防衛施設庁」との見出し。復帰後は米軍が在日米軍規則を理由に基地内での組合活動を一切禁止している一方で、全軍労側は地位協定の規定を盾にハチマキ闘争は違反ではないとの方針だ。この全軍労の方針に対し、米軍側は「就労してもハチマキを締めると賃金カットになる」との姿勢で、防衛施設庁も「ハチマキ闘争は国内法に違反するというのが労働省、外務省、防衛施設庁の統一見解だ」との見解を示したと伝えている。

 米軍への水道給水を県企業局か各自治体かで米軍と沖縄側で意見が割れている問題で「『協議機関』権限ない/屋良知事・メープルズ司令官会談/基地への給水問題/契約変更は日米間で」との見出しで、屋良朝苗と在沖米陸軍のメープルズ司令官との会談の様子を伝えている。司令官は「米軍と全軍労との協議機関の設置、基地諸問題に関する現地交渉機関の設置は、国のレベルで解決されるべきで、私には権限がない」「米軍への給水料金に対する現行方針の変更は日米政府間で協議すべきで、従来通りの契約に基づく料金はいつでも支払うよう準備している」と回答したという。

 15日が敬老の日ということで「深刻さ増す老人対策/県下で6万人/きょう『敬老の日』」との見出しで「老齢化社会に急ピッチ。老人福祉対策は深刻さを増している」と伝えている。これまで沖縄では「としよりの日」だったが、1972年から「敬老の日」となり、「老人福祉制度も〝本土並み〟になった」と記している。

 自衛艦の海外派兵問題について「公海上でも攻撃可能/防衛庁/水口氏、自衛隊の海外派兵問題で追及」との見出しを掲載している。記事では、防衛庁の久保卓也防衛局長が参院決算委員会で「単なる移動でなく、他国の艦隊が日本の侵略のために行動を起こしているときは、公海上であっても攻撃できる」と答弁したことを伝えている。

 職場の民主化を巡って労使が紛糾している琉球バスでは「77人の大量処分/琉球バスが提案/労組委員長ら11人解雇」との見出しで報じている。

 国政では「平和五原則で国交/共同声明の内容固まる/日中友好条約も」との見出しで、9月下旬の田中角栄首相の訪中で中国側ととりまとめる共同声明の内容を伝えている。台湾問題の取り扱いは懸案として残っているという。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。