「信仰への冒瀆だ」琉球遺骨の持ち去り訴訟、原告が返還求め初弁論で陳述 大阪高裁


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百按司墓(資料写真)

 琉球王家の子孫という沖縄県民らが、昭和初期に旧京都帝国大(京都大)の研究者によって今帰仁村の風葬墓「百按司墓(むむじゃなばか)」から研究目的で持ち去られた遺骨の返還を大学に求めた訴訟の控訴審の第1回口頭弁論が14日、大阪高裁(大島真一裁判長)で開かれた。

 原告側は、遺骨の返還を請求できる権利がないとして訴えを棄却した4月の一審京都地裁判決に反論。琉球の慣習に従って祖先の祭祀(さいし)を主宰する「祭祀承継者」として、祖先の遺骨の返還を請求できるとしている。

 この日の法廷で原告側の亀谷正子さん(78)=うるま市=は意見陳述し「持ち去られた遺骨は90年間も研究対象にされている。私たちの信仰に対する冒涜(ぼうとく)だ」と訴えた。閉廷後の記者会見で亀谷さんは「控訴審の裁判官は司法の良心を持った勇気のある人であってほしい。先祖のためだけではなく、琉球民族の未来のために頑張りたい」と話した。

 原告側は、大学側に対し遺骨の閲覧を求めてきたが、許可されていないとして、裁判官による遺骨の現場検証を実施するよう申し立てた。

 大学側は「(原告らのほかにも)子孫が多数存在し(子孫の)総意がないのであれば祭祀主宰者を定めることはできない」と原告側に返還請求権がないと主張し、控訴棄却を求めた。

 一審判決は、1920~30年代、沖縄本島北部の有力者が葬られているとされる百按司墓から研究者が複数の遺骨を持ち出したと認定した。

 しかし子孫とされる者は他にも多数存在し、原告らは承継者に当たらず返還請求権もないと判断していた。
(共同通信)