復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉9月19日「自衛隊、沖縄特別措置の割り当て牛肉購入」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」した1972年9月19日の琉球新報1面トップは、「まず国交正常化を実現/日台条約など後日に/周首相、訪中団に示唆」との見出しで、自民党代表団が日中国交正常化に向け中国を訪問した様子を紹介している。関連記事では、台湾側の状況として「沈外相、強く反対/椎名特派大使ら今夜帰国」との見出しで、台湾側からは日本の動向に対する強い反対を掲載している。

 沖縄配備の自衛隊を巡って「自衛隊、割り当て牛肉購入/県民への特別措置利用」との見出しで、沖縄復帰特別措置の非自由化品目の牛肉の輸入割当枠を自衛隊も活用して牛肉を購入していることに復帰協や県労協など民主団体が「特別措置は自衛隊のためのものではない」と反発している様子を伝えている。

 当時、牛肉は非自由化品目だったが、沖縄復帰特別措置で年間4千トンの輸入枠が割り当てられていた。県内業者は割り当ての範囲内でオーストラリアやニュージーランドから牛肉を輸入、販売していた。業者によると「自衛隊は業者を集めて入札を行ない、この輸入牛肉を購入している」「入札で料金を決めておき、部隊ごとに需要に応じて必要な数量を購入している」という。

 その結果、記事では「輸入割り当て分では県内の需要を満たせきれない状態で、総合事務局に対し割り当て量の拡大を要請中。いまのところ沖縄駐とんの自衛隊員は数百人しかいないため、需要も少ないが、11月から自衛隊配備が本格化し、需要が拡大すれば、それだけ県民に回る分が少なくなるわけで牛肉不足をきたしかねない。このため総合事務局でも政府に対し、善処を要請したが『出先のことなので、出先で解決するように…』との返事で取り合わなかった―という」と記している。

 在沖米軍の運用に関連しては「消音装置、来年7月以降か/施設庁次長談/嘉手納飛行場騒音で」との見出しで、防衛施設庁の鶴崎次長の記者会見を紹介している。会見内容について「嘉手納飛行場の騒音について地元からジェットエンジンのサイレンサー(消音装置)の設置要望があり、米軍としても設置手続きを進めているが、来年度予算(米会計年度、来年7月から)になるのではないか」と記している。

 神奈川県の米軍相模原補給敞の米軍戦車搬出阻止闘争を巡って「兵員輸送車けさ搬出/警官5千人で厳戒体制」との見出しで、米軍車両搬出が日本の国内法を守った形で再開される予定とともに、阻止行動の動向も伝えている。

 

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。