沖縄から持続可能な地域作りを探る 国連科学サミット、県内発のセッションがきょう20日午後8時からオンライン開催


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 今月13日から30日に開催される国連総会に合わせて、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための科学の役割と貢献を中心的なテーマに、第8回科学サミットが開かれる。全世界から80以上のセッション、460人以上の講演者が参加する。日本はこのサミットに初参加し、7セッションのうち一つは沖縄から20日午後8時からオンラインで配信される。

 県内発のセッションは沖縄科学技術大学院大学(OIST)と琉球新報社が共同で企画運営し、「可能性を秘めた小さな島~パートナーシップを通じた沖縄のより良い未来の創造」をテーマに瀬名波出氏(琉球大教授、リテックフロー代表)、オリガ・エリセーバ氏(OIST客員研究員、HerLifeLab代表)、花城良廣氏(沖縄美ら島財団理事長)、西田睦氏(琉球大学長)が登壇する。司会は島洋子氏(琉球新報編集局長)が務める。

 琉球新報社は2020年から「OKINAWA SDGsプロジェクト(OSP)」をうむさんラボ(比屋根隆社長)と運営し、ことし8月末時点で大学コンソーシアム沖縄を含む70社以上が参加している。企業を中心に市民、学生、行政、研究機関などが年齢や組織の枠を超えて出会い、共に学び合うことで社会課題を解決する具体的なプロジェクトを生み出し、沖縄、世界のよりよい未来を創造することが目的だ。

 この活動が注目され、セッション運営が実現した。当日はパートナーシップを通底するテーマとし、地域としてどのように科学を盛り上げ、持続可能な地域作りに生かして、さらに世界へと広げていけるか、登壇者と模索する。

 瀬名波氏は流体力学などを専門とし、大気中の二酸化炭素を活用した海藻の高効率陸上養殖システムを開発した。OSPの縁もあって障がい者の就労支援事業所と連携し、産業創出や雇用改善にも生かす。「科学は社会をやさしくする」との言葉で、科学の役割やあるべき方向を示す。

 医学博士であるオリガ氏は、自身が更年期で心身の不調に苦しんだ時、女性についての研究があまりにも少ないことに衝撃を受けた。人類の研究は男性が基準で、人口の半分を占める身近なパートナーであるはずの女性が置き去りにされていると指摘し、研究と教育活動のため起業した。

 沖縄は首里城など歴史文化の世界遺産と世界自然遺産の両方が登録されたまれな場所で、沖縄美ら島財団は両方の研究や活用に関わる。琉球王朝時代の美術工芸品から地域の芸能や料理、海と陸の両方の自然といった幅広い研究とその活用は関連し合い、異分野の出会いが思わぬ発展を生んだこともあるという。理事長の花城氏は「持続可能な地域への知恵が詰まっている」と話す。

 琉球大学は県内初の高等教育機関として戦後に創設され、地域の特色を生かした多様な研究と教育を担う。アジア・太平洋地域とつながる活動も多く、学長の西田氏は琉球諸島を拠点に日本、アジアを結んで自然史研究の知見を蓄積・発信する国立自然史博物館の誘致にも尽力する。「地球の持続可能性に直結するユニークなものになる」と話し、沖縄から世界への広がりを展望した。

 国連総会科学サミット(沖縄分)は20日午後8時からオンラインで開催する。申し込みはhttps://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSepAYw0RRI2EzfO2bOmjvH4o3Dh_kqvELyIJvaqyB0YJe57yw/viewformから。