復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉9月22日「犯人引き渡しで対米折衝」軍従業員射殺事件―琉球新報アーカイブから―


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 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」した1972年9月22日の琉球新報1面トップは、「犯人引き渡しで対米折衝/軍従業員射殺事件/知事が上京、要求/県議会も代表派遣へ/25日に臨時議会招集」との見出しで、20日に金武町の米軍キャンプ・ハンセン隊舎内であった海兵隊員による日本人基地従業員射殺時件で、米軍が取り調べには応じたものの身柄の引き渡しを拒否する事態となっていることを伝えている。記事では「軍従業員射殺事件は大きな政治問題に発展してきた。(中略)今度の事件は〝基地沖縄〟の姿を改めて浮き彫りにしたわけで『犯人引き渡し要求』の県民世論は、大きなうねりを呼びそう」と記している。

 県議会の与野党も各派交渉会を開き協議。そこで参考人として出席した杉原県警捜査一課長が事件の概要を説明する中で「捜査当局としては被疑者の身柄を確保するのが理想だが、米軍は地位協定17条を理由に引き渡しに応じていない。この問題の解決には高度の政治的判断が必要だ」と述べたという。

 関連記事では「本土野党など抗議へ/社党、米側に引き渡しを要求」との見出しを掲載。

 また別の関連記事では「日本側に協力/海兵隊が発表」と米軍側の対応も掲載している。その中では「事件の解決に当たって在日米軍基地協定書(地位協定)の趣旨、または精神を厳守し、諸事件の解決に当たることを公表する。なお同協定書の規定の範囲内で同事件の捜査に当たって日本政府機関に対し、衷心よりの協力を約束する。(中略)当該協定書の趣旨に基づいて当人の身柄は日本政府の該罪状による容疑者の告発がなされるまで、または米軍の上級権威筋による身柄の引き渡しの指示があるまで引き続き米軍側に監禁されよう」と記している。

 米大使館の見解も掲載。「地位協定の建て前を固守/米大使館が回答」との見出しを掲げている。

 11月19日投開票の那覇市長選に関連して「翁長氏が立候補表明/那覇市長選/平良氏と一騎打ち」との見出しで、現職の平良良松氏(社大)と自民の翁長助静氏との一騎打ちとなる構図を紹介している。

 アルミ企業の沖縄誘致をめぐる問題で「〝アルミ企業、健康に有害〟/公害調査団帰る/正式報告は今月末/誘致は事実上困難に」との見出しで、誘致困難視の見通しを示している。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。