10月23日投開票の沖縄県那覇市長選挙まで23日で1カ月に迫った。立候補を表明していた元ボクシング世界王者の平仲信明氏(58)が立候補を取りやめ、「オール沖縄」勢力が擁立する前県議の翁長雄治氏(35)と自民党、公明党が推薦する前副市長の知念覚氏(59)の一騎打ちとなる公算が強まった。雄治氏と知念氏はいずれも雄治氏の父である故翁長雄志前市長(前知事)の後継者を自認し、翁長市政を継いだ城間幹子市長がどちらを支援するかも注目される。
平仲氏は立候補をやめた理由を「父の喪に服すため」と説明した。ただ、平仲氏周辺や自民関係者によると、平仲氏と付き合いのある建設業者らが説得したことなども背景にあるという。平仲氏が下りたことに対し、知念氏の陣営関係者は「保守の支持者がまとまる」と歓迎した。
平仲氏を擁立したのは不動産業などを展開するRJグループの一丸秀信会長だ。一丸氏は、牧志公設市場衣料部・雑貨部の建物取得に意欲を示し、知念氏を支援する企業が同市場の建物を取得したことに不満があったとされる。一丸氏は新たな候補を立てる予定について「現時点ではないが、政策が一致する人がいれば支援する」と語った。
一方、雄治氏の陣営は城間氏の支援を得るための動きを加速させている。与党市議は21日、城間氏に支援を要請した。22日には雄治氏自身が城間氏と面談した。与党市議らによると、城間氏はどの候補を応援するか「決めていない」と答えたという。
雄治氏の陣営は、城間市政の後継という“お墨付き”を得るため、城間氏の支援を重要視する。与党市議は「支援が得られない場合は痛手だ」と語り、「副市長として支えたとはいえ、自民側に行った知念氏を推すのはおかしい」と応援に期待を寄せる。
対する知念氏の陣営は自公の支持層を固めることと、保革を超えて無党派層に支持を広げることを戦略の2本柱に掲げる。選挙事務所も自民を中心とする拠点と、後援会を中心とする“市民党”の拠点の二つを構える。20日にあった後援会の事務所開きでは、古謝景春南城市長が「知念さんこそが翁長雄志さんの後継者だ」と強調した。
関係者は「無党派層を取り込まないと、自公の票だけでは勝てない。ウイングを広げるために城間氏の動向は重要だ。応援してくれればベストだが、中立を保つだけでもメリットはある」と語る。現時点で城間氏に接触する予定はないといい「政策発表など手順を踏めばいい」と思惑通りに進める自信を見せた。
(伊佐尚記)