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食材から考える生物多様性 石垣綾音・まちづくりファシリテーター<明日からできるわたしの一歩>


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石垣綾音

 世界経済フォーラム(WEF)の2022年の報告書で「今後10年間で最も深刻な世界規模のリスク」の上位三つをご存じだろうか。1位が「気候変動」、2位が「異常気象」、そして3位は「生物多様性の損失」である。

 生物多様性といえば、イリオモテヤマネコやジュゴンなどを思い浮かべる方が多いと思うが、動物だけではなく植物、絶滅も同様に問題視されている。環境省が登録している国内希少野生動植物一覧の中には、植物198種が登録されている。動物についてはその生育環境を守ろうという呼びかけなどがあり分かりやすいが、その裏で静かに消えているのが植物と言えるかもしれない。

 種の絶滅・希少化の原因の一つが私たちの何げない生活にある。一つの大きい要素が食事だ。普段購入している野菜や果物は、どれだけの多様性があるのだろうか。地元で食べられていた品種はどのくらい残っているのだろうか。気づけば、どこかで大量生産されている同じ品種ばかりが食卓に並んでいないだろうか。

 食に多様性があることは、生物多様性や文化的な豊かさを確保するだけではなく、地場に合った植物を守ることで、災害への対応や、食の地産地消、地域の食料自給率の確保につながる。

 大量生産される食を見直し、「おいしい、きれい、ただしい」食べ物をすべての人が享受できるように、をスローガンに活動するスローフード運動は、生物多様性をすべての活動のベースに置いている。沖縄には、「スローフード琉球」という支部があり、琉球王国時代や戦前から続く各地域の食の調理法・保存方法・食材についての記録や、これらの食材を使った料理ワークショップを開催し、その食材の持つストーリーとともにおいしい料理を共有する活動、フードロスについて考えるイベントなどを開催している。

世界のスローフードの活動者が集うイベント「テラマードレ」に沖縄から参加する人々=21日、イタリアのトリノ

 今月22日からは、世界のスローフードの活動者が集う「テラマードレ」というイベントがイタリアで開催されている。世界の足並みをそろえ、各地の草の根の運動がパートナーを組み食・農・気候変動・生物多様性についてアプローチするためのイベントである。スローフード琉球も、島豆腐やフーヌイユ、といった沖縄の食と文化を伝えに派遣されている。

 ファーマーズマーケットだけでなく、スーパーなどでも県内産の野菜が販売されることも多くなっている。次のお買い物で、食材の産地にも少し気をつけて買い物をしてみることから始めてみてはいかがだろうか。