復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉9月27日「軍従業員射殺時件で裁判権行使はどの国か未決定」―琉球新報アーカイブから―


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 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」した1972年9月27日の琉球新報1面トップは、「あす日中共同声明発表/台湾問題で詰め/戦争終結、政治的に解決/第2回首脳会談」との見出しで、田中角栄首相と中国の周恩来首相との日中首脳会談の様子と日中共同声明が28日に北京で発表される見通しを紹介している。記事では概ね合意に至っている日中共同声明の骨子について「①日中外交関係の樹立②日中復交の意義③平和5原則による日中関係④アジア太平洋地域における支配権を求めないこと⑤中国側からの賠償請求権の放棄⑥平和友好条約の締結⑦通商、航海条約、郵政、気象、航空、漁業、科学技術各協定の締結など―7点について問題はなく、残る戦争終結についても政治的解決が図られ、合意点に達しているといわれる」と記している。日中共同声明の関連で外相会談の内容などにも触れ「『声明』で逐条審議/首脳会談、急ピッチに進む」との見出しで紹介している。

 米軍キャンプ・ハンセン内での基地従業員射殺時件の続報について「裁判権行使/どの国か未決定/軍法務官、射殺事件調査団に語る」との見出しを掲載している。記事では、日本弁護士連合会と東京弁護士会、沖縄弁護士会による合同調査団が日本の捜査当局や米軍関係、事件参考人から聞き取りをしたところ、米軍筋の情報として明かにした内容として、容疑者は米軍当局が統一軍法118条(殺人罪)の容疑で拘禁しているとのこと。さらに「身柄引き渡し拒否について軍当局を追求したところ、キャンプコートニーの某法務官は『日本側から裁判行使の通告がないのに身柄を引き渡す必要はない。通告は遅れるだろうとの情報を得ている。第1次裁判権をどっちが行使するか、まだわからないじゃないか』と回答したという」とつづっている。

 日本「復帰」に伴う尖閣諸島の警備について「P2J機で尖閣列島を警備/海幕長語る/沖縄配備後に飛行」との見出しで伝えている。記事では、「日中国交正常化に反発する台湾が、尖閣列島に対する攻勢を強めてくるのではないか」との質問に関連して「海幕長は『第一次的な警備は海上保安庁の巡視船による』としつつも空からの警戒は米海軍のP3のあとを受けてP2Jが受け持つというもの」と記している。

 日中国交正常化の動きに伴い「国府海軍、高知の漁船捕獲/船長を連行、新南群島付近で」と、台湾側の動きも出てきている。「捕獲理由はわかっていない」記している。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。